オフィス移転のお知らせ

この度、弊法人は業務の効率化を考え、6月1日より、オフィスを下記に移転いたしました。
新事務所はアーツ千代田3331からもほど近く、JR御徒町 、上野広小路駅、末広町駅から徒歩5分圏内ですので近くにお越しの節は、ぜひお立ち寄りください。
今後ともこれまでどおりご支援ご交誼を賜りますようよろしくお願い申し上げます。


【移転先】〒110-0005 東京都台東区上野3-13-9 原田ビル201
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『美術手帖』5月号 SEA展のレビューを問う

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 NPOアート&ソサイエティ研究センターが主催した「ソーシャリー・エンゲイジド・アート:社会を動かすアートの新潮流」展のレビューが『美術手帖』5月号(2017年4月17日発売)に掲載された。「地域アートの延命措置」と題した筆者の主張には見過ごせない誤りがあり、さらに著作権を有する作品画像の掲載許可手続きにおいても編集部への疑問が残る。
 私たちは、5月号発行後すぐに美術手帖編集長と美術出版社社長にたいし、電話と書面により本件の真意を尋ねた。しかし回答願いの期日が過ぎても返答を得られないため、この場を借りて2点の問題を公開したい。

1. レビューにおける事実誤認と根拠を示さない批判

 レビューの筆者は黒瀬陽平氏であった。
前提として、評論は筆者の表現の場であり、「表現の自由」は守られる権利であるが、編集部は出版の前に内容に誤りがないかチェックする必要があるのは言うまでもない。私たちは黒瀬氏より直接取材を受けていない。黒瀬氏がレビューの冒頭で示したSEAの定義だが、これは本展覧会を評論する上で、最も重要な前提となる。
「SEAは「関係性の美学」(ニコラ・ブリオー)から不必要と思われる美学的要素を削ぎ落とし、より直接的に現実社会に関わり、何らかの社会変革(ソーシャルチェンジ)を起こそうとするアートの実践だとされている」
とあるが、SEAとは美学的要素を「削ぎ落とし」、捨て去ったものではない。黒瀬氏も本文で紹介している、パブロ・エルゲラの言説にもとづけば、SEA とは美学的要素とそれ以外の要素(社会的・政治的等)を併せもったものだ。
SEAの定義からしても、筆者がこの分野への基本的な知見を欠いており、国際的な流れを理解していないことは明らかであり、日本で初めて本格開催されたSEA展の論者として的を射た批評ができる人物ではないといえる。美術手帖がなぜこの人選をおこなったのか疑問である。
 さらに作品の評価についても、黒瀬氏は、スザンヌ・レイシーの作品について、具体的な根拠も示さず「劣化」と批判し、同様に、若木くるみの作品を「幼稚」と結論づけている。こういった言説が一流の美術評論誌で活字になることは、作家の評価に大きな影響を与えるわけで、そのことについて編集部は最大限の注意を払うべきである。


2. 作品画像の掲載手続きへの疑問

 私たちは美術手帖編集部の依頼により作品画像を提供した。大きく掲載されたスザンヌ・レイシーの作品をはじめ、作家の著作権は存在しており、展覧会紹介の目的に限って、作家に代わり私たちが画像提供している。最終確認として送られてきたレイアウトには、黒瀬氏の原稿はなく、独立した記事のごとく片ページのみPDFで送られてきた。
 だが、実際は黒瀬氏の原稿と写真は、見開きでひとつの記事であった。スザンヌ・レイシーの写真は、編集者から最初に希望されたものではなく、後になって追加依頼があったもので、もし原稿を見ていたなら、私たちがレイシーの写真を提供することはなかった。


 今回の展覧会は、文化庁、アーツカウンシル東京、ドイツ文化センター、オランダ大使館、資生堂などによる助成と、展覧会の主旨に賛同する多くの個人の協力を得て実現したものだ。アートが人々の生活から乖離したものではなく、生活そのもの、生き方そのものがアートに直結しているとする「Living as Form展」(2014年)の開催から3年目に、この「ソーシャリー・エンゲイジド・アート展」の実現に漕ぎつけることができた。それはひとえに、実社会と向き合い、いかにその課題に向き合えるのか、日夜模索しているアーティストの実践を伝えたいという思いからであった。そのために、私たちはSEAに関する調査研究をおこない、小規模の展覧会や関連イベントを実施し、パブロ・エルゲラの著書の翻訳出版などをおこなってきた。
 現在国内で開催される地域でのアート・プロジェクトでは、人のつながりや絆づくり、人々の内発的な表現行為に焦点が当てられているが、社会的に弱い立場にある人々、過酷な環境で生きる人々の直面する社会課題を扱うアート活動はいまだ少ない。
 ソーシャリー・エンゲイジド・アート展は、そうした国際・国内の潮流を並列させ、日本でのアートと社会の関わり方を再考する意図があった。その真意をくみ取らず、私たちの継続的な活動も理解せず、一方的な批判が活字という形で発表されたことは、大変残念なことである。


ソーシャリー・エンゲイジド・アート展 実行委員会一同



参考リンク:SEA展来場者のアンケート結果 http://www.art-society.com/sea

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SEA展来場者アンケート調査結果

アンケート調査は、2017年2月18日から3月8日の14日間の会期中に実施。展覧会会場出入り口でアンケート用紙への記入を呼びかけたところ、来場者全体1536人に対し461件の回答が寄せられました。その調査結果から、「とてもよかった」50.8%、「よかった」41.4%を加えると92%を超える高い評価をいただきました。また、今後もこのようなSEAを紹介する企画展を希望するか?という問いかけには、96%の来場者が「希望する」との回答があり、SEAへの関心の高さや、関連情報へのニーズの大きさを実感しました。アンケート実施に際しましては、多くの方々からの貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。
以下、アンケート結果と自由コメントから一部抜粋したものを掲載いたします。

展覧会全体への感想について

「とても興味深かった」
「今まで触れたことのない世界をみれて楽しかった」
「世界でおこなわれていることの視点の違いが興味深い」
「アートが社会でできることをあらためて考えさせられた」
「アートの新しい可能性を感じた」
「SEAのスケールの大きさを感じて感動した」
「メッセージ性がありもっとこういう展覧会があってほしい」
「価値観、意識、問題意識を揺さぶられた」
「近年で最もエキサイティングな展覧会」
「展示だけではわからない部分もあった」
「新しい可能性を感じたが、理解がむずかしものもあった」
「作品のギャップ、多様性、強度のばらつきを感じた」など

日本人の作品について

「(問題の文脈を)共有しているので気になった」
「日本のプロジェクトをもっと紹介してほしい」
「日本の若手アーティストの社会との関わりが希薄?切羽詰まってない?」
「日本の独特のSEAにフォーカスした展示も見たい」
「地域アートをどう批評的に再考するのか?」
「SEAへの批評性、展覧会で紹介する意義に触れてほしい」など

展示について

「常駐するアーティストとのコミュニケーションがあり、よかった」
「プロジェクト系の展示がよかった、勉強になった」
「見応えがある展示、バランスがよかった」
「映像が多かった」
「参加型の年表がよかった」
「同時にトークイベントが多くあってよかった」
「映像の時間の掲示がほしかった」
「イスがもっとほしかった」
「ギャラリーでの解説があればよかった」(ガイドは希望に応じて提供していた)など。

今後への期待

「SEAについての展覧会を継続的に開催してほしい」
「書籍、記録集をまとめてほしい」
「SEA位置づけ、定義、コンセプトをより説明してほしい」
「参加型年表の発行に期待」
「日本の現状をより大規模に紹介する展覧会を希望」など

アンケート結果


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アンケート回答者の属性


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Socially Engaged Art 展 終了のお知らせ

『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展:社会を動かすアートの新潮流』は終了いたしました。会期中は多くのみなさまにご来場いただきまして誠にありがとうございました。
みなさまにお答えいただいたアンケートは現在集計中です。集計終了後、結果をWEBにて公開いたします。また展示のSEA年表は追記いただいたみなさまの声を反映し、更に充実した年表へと完成させたいと思っておりますのでご期待ください。

Photo by Haruhiko Muda

Photo by Haruhiko Muda

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『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展:社会を動かすアートの新潮流』を開催します!!

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会期:2017年2月18日(土)〜3月5日(日)
開館時間:11:00〜20:00 (最終入場19:00)
休館日:なし
会場:アーツ千代田3331
観覧料:一般・大学院生1000円/大学生・中高生500円(要学生証)/小学生以下無料

​http://sea2017.seaexhibition.site/

近年、アートの新しい潮流として注目されている「ソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)」は、現実社会に積極的に関わり、人びととの対話や協働のプロセスを通じて、何らかの社会変革(ソーシャル・チェンジ)をもたらそうとするアーティストの活動の総称です。本展では、とくに3・11以降顕著となった、社会への関わりを強く意識した日本人アーティストの活動に注目し、アイ・ウェイウェイ、ペドロ・レイエス、パーク・フィクションなど海外の代表的な作家やプロジェクトとともに紹介。東京を舞台に5つのプロジェクトも実施します。日本で初めての本格的なSEAの展覧会としてご期待ください。


アーティスト[プロジェクト・イン・Tokyo]


ペドロ・レイエス《銃をシャベルに》
2008年に始まった本プロジェクトは、発砲事件の絶えないメキシコの町で銃を回収し、鋳物工場でシャベルに加工して木を植え、展示する。本展では、港区笄小学校の4年生が1/2成人式で校庭に木を植える。

ママリアン・ダイビング・リフレックス/ ダレン・オドネル《子どもたちによるヘアカット》
子どもたちがプロの美容師から講習を受け、美容室で大人の客に無料のヘアカットを行う。大人と子どもの力関係を逆転させ、子どもの能力を見直すきっかけを提供する。東京では、足立区の「東京未来大学こどもみらい園、みらいフリースクール」で学ぶ子どもたちを中心に、東京ビューティーアート専門学校で研修を受けた子どもたちが、ヘアカットに挑戦。 ただ今、ヘアカットを希望するお客様の予約とヘアカットに挑戦する子どもたちも若干名募集しています!

西尾美也《Self Select: Migrants in Tokyo》
東京で暮らす海外からの移住者が、見ず知らずの通行人と衣服を交換する様子を映像に収めた後、展覧会場で自分の「服」を製作する。〈移住者〉と〈わたしたち〉の境界、ひいては〈移民〉について問いを投げかける。森美術館で開催中のラーニングプログラム「私たちは学んでいる:美術館と実験的なアート・ラーニングのこれから」に出演します。2月16日(木)18:30-20:00 詳細と申込みはこちらから。

明日少女隊《Believe -私は知ってる-》
2017年1月から国会で審議される刑法(性犯罪)の改正に向けたプロジェクト。紙製マスクに一般の人々から性暴力反対のメッセージを集め、そのマスクを装着して国会前などでパフォーマンスを行う。2月26日(日)13:00~17:00 、アーツ千代田3331 B105室にて「ビリーブ・トーク&ウォーク」を開催します!出演:明日少女隊、ちゃぶ台返し女子アクション、怒れる女子会

ミリメーター《URBANING UNIV.》
都市を「私の場所」にする実践者の養成を目指した1泊2日のラーニング・プログラム。議論や体験カリキュラムを通して誰もが参加できる小さな都市計画の方法を探り、そこから〈都市空間〉と〈私〉の関わりを考える。詳しくは、URBANING_Uウェブサイトをご覧ください。


アーティスト[会場にて展示]


アイ・ウェイウェイ
スザンヌ・レイシー 
フィフス・シーズン
パーク・フィクション/マルギット・ツェンキ/クリストフ・シェーファー 
プロジェクト・ロウ・ハウス
高川和也 
丹羽良徳 
藤元明 
山田健二



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本展レクチャー・シリーズ[参加アーティストによる連続トーク]


2月18日(土)14:00〜16:00
ペドロ・レイエス「アートと武装解除:《銃をシャベルに》の背景」

会場   アーツ千代田3331 (1階 ギャラリーB)
定員   20名(先着順 事前申し込み不要) ※通訳付き
参加費  無料(メインギャラリーの展覧会を鑑賞される方は、入場券が必要です)

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2月19日(日)14:00〜16:00
パーク・フィクション+藤元明+笠置秀紀(ミリメーター)「都市=わたしたちの場所」

会場   アーツ千代田3331 (1階 ギャラリーB / 1F, Gallery B)
定員   50名(先着順 事前申し込み不要) ※通訳付き
参加費  500円(メインギャラリーの展覧会を鑑賞される方は、入場券が必要です)

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2月24日(金)19:00〜21:00
ダレン・オドネル(ママリアン・ダイビング・リフレックス)「社会の鍼治療」

会場   アーツ千代田3331 (1階 コミュニティスペース)
定員   50名(先着順 事前申し込み不要) ※通訳付き
参加費  500円(メインギャラリーの展覧会を鑑賞される方は、入場券が必要です)

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3月2 日 (木)19:00〜21:30
フィフス・シーズン「​​オランダの精神施設内のAIR:精神と創造性への挑戦」

登壇者:エスターフォセン (フィス・シーズン ディレクター/キュレーター)+ウィルコ・タネブライヤー(精神科医/アムステルダム​​市メンタルヘス部局​​医療長)+岡田 聡(精神科医/​​アートコレクタ)+アーカス・プロジェクト


会場:アーツ千代田3331 ※開催時間に変更の可能性があります。

 

関連イベント


2月13日(月)10:00〜18:00
森美術館国際シンポジウム 「現代美術館は、新しい『学び』の場となり得るか? エデュケーションからラーニングへ」
会場:アカデミーヒルズ(六本木ヒルズ森タワー49階) ※2月14日より森美術館と各機関が連携し、アートと社会について考える「ラーニングウィーク」を開催(詳細は森美術館のwebサイト参照)


2月20日(月)19:00~21:00
ローカルな人々の知恵 「下からの」都市計画(仮題) マルギット・ツェンキ&クリストフ・シェーファー(パーク・フィクション)+佐藤慎也
会場:東京ドイツ文化センター 1階ホール


2月22日(水)19:00〜21:00
「ヒストリオグラファーとしてのアーティスト? : 記憶、忘却、物語」
モデレーター:崔 敬華 登壇アーティスト:藤井 光、山田 健二、山本 浩貴、横谷奈歩 会場:アーツ千代田3331 メインギャラリー 主催:nap gallery


2月26日(日)13:00~17:00
「ビリーブ・トーク&ウォーク」明日少女隊、ちゃぶ台返し女子アクション、怒れる女子会
会場:アーツ千代田3331 B105室


2月26日(日)17:30~19:00 (先着20名、要予約)
ギャラリートーク&セッション「アイ・ウェイウェイの新作《ライフジャケットの輪》とその背景」
講師:片岡真実(森美術館チーフキュレイター) インタビュア:村尾信尚(ニュースZEROメインキャスター) 会場:アーツ千代田3331

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【SEA展レクチャー・シリーズ】
「精神と創造性の挑戦:オランダ フィフス・シーズンの取り組み」

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フィフス・シーズンは、精神科医療施設「アルトレヒト」の広大な敷地内に、アーティストのスタジオ・ハウスを持つアーティスト・イン・レジデンス(AIR)プログラム。精神医療と社会の間のギャップを埋めることを目的に1998年設立され、これまでに100人以上が滞在した。特別な環境の中で、アーティストは1シーズン(3か月)滞在し、患者やスタッフとも交流し、作品を制作する。2015年、オランダ医療界の権威ある「エリザベス・ヴァン・シュトリンゲン賞」を受賞。トークセッションでは、フィフス・シーズンのディレクターでありキュレーションの責任者であるフォセン氏が、プログラムの特色とその目的を語る。また、姉妹プロジェクトとして2014年、ニューヨークの精神病院で開始した「ビューティフル・ディストレス」の設立者タウネブライヤー氏により、このAIRの展望、精神疾患と芸術の関係性について語って頂く。日本からは長年精神科医として、精神疾患と向き合いつつ、アートコレクターとして芸術と密接な関わりを築いてこられた岡田氏と、日本のAIRプログラムを代表する茨城県守谷市のARCUS Projectの石井氏に登壇頂く。「精神」と「アート」を軸として、オランダ対日本という視点でなく、4者の経験とそれぞれの視点から本テーマを深めていく。

「 精神と創造性の挑戦:オランダ フィフス・シーズンの取り組み」
登壇者:エスター・フォセン / ウイルコ・タウネブライヤー / 岡田聡 / 石井瑞穂
“Activities of the Fifth Season: Artist in Residence Program in Psychiatric Institution”
Speakers: Esther Vossen / Wilco Tuinebreijer / Satoshi Okada / Mizuho Ishii
3月2日(木)19:00〜21:30
会場   アーツ千代田3331 (1階 コミュ二ティスペース)
定員   50名(先着順 事前申し込み不要) ※通訳付き|通訳:池田哲
参加費  500円(メインギャラリーの展覧会を鑑賞される方は、入場券が必要です)


|出演者紹介|
エスター・フォセン| Esther Vossen
フィフス・シーズン ディレクター/キュレーター。オランダ・コーポレートアート協会(VBCN)の理事およびモンドリアン財団の委員を務める。ジャーナリズムを学び、オランダ国立放送(VPRO)の番組制作者として働く。その後、アート・アカデミーとアムステルダム大学で美術史を学ぶ。 1998年以来、アペル・アーツ・センター、オランダ国立博物館の精神医学部門、Dolhuys博物館などの美術機関においてプロジェクトマネージャーおよびキュレーターとして働く。

ウィルコ・タウネブライヤー|Wilco Tuinebreijer
ビューティフル・ディストレス設立者&理事長/精神科医。アムステルダム市公共健康局メンタルヘルス部にて医療長として従事する。

岡田 聡| Satoshi Okada
Villa Magical2014代表/精神科医。1958 年富山県生まれ。精神科医を本業としながら、30代の頃より日本の若手作家を中心に現代美術作品のコレクションをはじめる。展覧会へのコレクションの出品のほか、自ら展覧会の企画などもおこなう。またアートバー(TRAUMARIS)やギャラリー(MAGIC ROOM?、magical、ARTROOM)の運営、Ustreamでのアート番組の配信や自ら参加するアートパフォーマンス集団「どくろ興業」での活動を経て、近年は湘南Villa Magical2014を拠点に活動。

石井端穂|Mizuho Ishii
アーカスプロジェクト コーディネーター。千葉県生まれ。2002年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程デザイン専攻修了。03-04年ポーラ美術振興財団在外研修員として東南アジア各国のオルタナティヴスペースを調査。07-08年、アーティスト主導のAIRを運営。アーカスプロジェクトでは在学中よりボランティアとして携わり、12年よりコーディネーターとしてレジデンスプログラムや地域プログラムの企画運営を務める。現在は主にアーカイブ事業を担当。

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『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展:社会を動かすアートの新潮流』

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【SEA展レクチャー・シリーズ】
「アイ・ウェイウェイの新作《ライフジャケットの輪》とその背景」

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現在ベルリンを拠点に活動するアイ・ウェイウェイは、昨年、トルコからギリシアのレスボス島に流れ着いた難民たちが脱ぎ捨てたライフジャケット14,000 枚をベルリンの劇場の柱に巻きつけた作品で、難民問題に揺れる国際世界へ強いメッセージを送った。本展のために制作された同シリーズの新作について、森美術館での大規模な個展(2009 年)を企画した同館チーフキュレイターの片岡真美さんが解説。また、アイ・ウェイウェイに二度にわたりインタビューを行ってきたニュースキャスターの村尾信尚さんと、社会を動かそうとするアーティストたちの活動とその背景に迫る。

ギャラリートーク&セッション 「アイ・ウェイウェイの新作《ライフジャケットの輪》とその背景」
講師:片岡真実(森美術館チーフキュレイター)/インタビュア:村尾信尚(NEWS ZERO メーンキャスター、関西学院大学教授)
Gallery Talk and Session Ai Weiwei’s New Work and His Commitment to Documenting the Refugees
Lecturer: Mami Kataoka / Interviewer: Nobutaka Murao
2月26日(日)17:30〜19:00
会場   アーツ千代田3331 (ギャラリートーク後、1階コミュニティスペースで開催)
定員   50名(先着順 事前申し込み不要)
参加費  500円(メインギャラリーの展覧会を鑑賞される方は、入場券が必要です)


|出演者紹介|
片岡真実 Mami Kataoka
東京オペラシティアートギャラリーを経て、2003 年より森美術館に勤務。「六本木クロッシング」(2004、2013)、「小沢剛展」(2004)、「笑い展」(2006)、「ネイチャー・センス展」(2010)、「会田誠展」(2012) などの企画を担当。2009 年に企画したアイ・ウェイウェイの大規模な個展「何に因って」は46 万人を動員、その後国際巡回した。現在、CIMAM(国際美術館会議) のボードメンバー、グッゲンハイム美術館アジア・アート・カウンシルのメンバー。2018 年に開催される第21 回シドニー・ビエンナーレのアーティスティックディレクターにアジア人として初めて就任。

村尾信尚 Nobutaka Murao
大蔵省時代に、国際人道支援を行うNGOやNPOを支援するためのジャパン・プラットフォームの設立に携わり、NGO、経済界、政府が協働するシステムを確立。当時から、政府の中枢にあって、国際社会への貢献や、社会に貢献する企業活動「ソーシャル・アントレプレナーシップ」の重要性を説いてきた。2006年よりNEWS ZERO のメーンキャスター。アートと社会貢献に高い関心をもち、アイ・ウェイウェイには東京と北京で二度インタビューを行ってきた。本展におけるアイ・ウェイウェイの新作の実現にも協力。

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『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展:社会を動かすアートの新潮流』

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【SEA展レクチャー・シリーズ】
MDRの参加型パフォーマンスは「社会の鍼治療」

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ママリアン・ダイビング・リフレックス(MDR)は、1965年カナダ、エドモントン生まれの作家、脚本家、パフォーマンス・アーティスト、ダレン・オドネルが1993年に設立したアート&リサーチ集団である。2003年まではオドネルの舞台パフォーマンスが中心だったが、伝統的なヨーロッパ演劇の後進性や硬直性に限界を感じた彼は、「人々はお互いにどのように関わりあえるか」をテーマにアプローチの幅を広げ、学校や老人ホーム、地域組織、国際アート・フェスティバルなどとのコラボレーションで、“社会の鍼治療(Social Acupuncture)”と称する、遊び心にあふれ、挑発的な参加型プロジェクトを行うようになった。2006年に著書『Social Acupuncture』を出版し、MDRの創造的方法論を確立した。
本レクチャーは、代表的プロジェクト「子どもたちによるヘアカット」をはじめさまざまな事例から、そのコンセプトを説き明かす。

MDRの参加型パフォーマンスは「社会の鍼治療」
Participatory performance by MDR is called “Social Acupuncture”

登壇者:ダレン・オドネル(ママリアン・ダイビング・リフレックス[MDR]芸術ディレクター)
Speaker: Darren O’Donnell (Artistic Director of Mammalian Diving Reflex)

2月24日(金)19:00〜21:00
会場   アーツ千代田3331 (1階 コミュ二ティスペース)
定員   50名(先着順 事前申し込み不要) ※通訳付き|通訳:池田哲
参加費  500円(メインギャラリーの展覧会を鑑賞される方は、入場券が必要です)


子どもたちによるヘアカット Haircuts by Children
10 ~ 12 歳の子どもたちが、プロの美容師から講習を受けた後、本物の美容室を借り、大人の客に無料のヘアカット・サービスを行う。そのねらいは、「子どもたちには美的・創造的な決定のできる個人としての責任と自信を持たせ、大人たちには、従来の大人と子どもの力関係が逆転した非日常的な体験により、子どもの能力を見直すきっかけを提供する」。2006年からMDRが活動拠点を置くトロントをはじめ、世界35都市で、主に地域の芸術祭のプログラムとして実施されてきた。日本での初開催となる今回は、足立区のオルタナティブ・スクール「こどもみらい園」の児童を中心に、2 月 26 日(日)にヘアカットに挑戦する。

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子どもたちによるヘアカット −Haircuts by Children−

『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展:社会を動かすアートの新潮流』

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S.O.S.レポート「オルタナティブ・スペースが還るとき」

ツアー当日、出発場所となっていたアートラボはしもとではS.O.S.のメンバーによる関連企画「SOMETHINKS Planning by ARTISTS」展が開催されていた。

ツアー当日、出発場所となっていたアートラボはしもとではS.O.S.のメンバーによる関連企画「SOMETHINKS」展が開催されていた。


「オルタナティブ・スペース」という言葉をあちこちで聞くようになって久しい。一見すると定義がし難いように見えるが、例えば千代田アーツ3331のように、ひとつの場を展示スペースとしてはもちろんのこと、講演会やワークショップ、そしてオフィスや地域住民の集会所など、表現活動に派生した様々なアクティビティを行う場と考えて良さそうだ。
 今日、このようなオルタナティブ―すなわち多様な芸術表現を受け入れるための場は、アーティストのみならず市民をも巻き込んで、「アート」の既成概念を拡張する土壌となりつつある。見る/見られる者、表現する者/それを支える者といったあらゆる境界を統合しつつ、時には祭事的な色を湛えながら、オルタナティブ・スペースは開かれた場として芸術と一体化しているのである。
 言うまでもないことだが、表現の場をめぐる格闘は20世紀の芸術を語るうえで重要な位置を占めてきた。戦後、物理的・制度的制限のあるホワイト・キューブを踏み越えたアーティストたちが新たな表現の場を模索し、そのムーヴメント自体が社会やコミュニティを生成する役割を担ってきた。例えば、2000年代初頭から日本各地で開催されるようになったアートフェスティバルという形式は、その系譜を受け継ぐムーヴメントと言ってもいいだろう。とある場を舞台に、作品を介して人と人が出会い、関係性を構築する。作品は一連のプロジェクトの仲介役としての役割を果たし、作品鑑賞を含めた「その場での体験」そのものに価値が見いだされる。ニュートラルかつ“鑑賞体験の純粋性”1を志向したホワイト・キューブから、オルタナティブあるいはサイトスペシフィックな場、そしてそれをもとにしたヒト・モノ・コト間の関係性の構築へ————。このような変遷を踏まえて、以下改めてアートと場の関係性について考えてみたい。というのも、先日伺った相模原のプロジェクトが、この文脈において新たな表現の場の「見方」を示唆しているように思われるからである。
 SUPER OPEN STUDIO(通称S.O.S.)は、神奈川県北部の相模原で活動するアーティストのアトリエを一般に公開するプロジェクトとして、2013年にスタートした。その制作から展示に至るまでの包括的な活動を作り手自らが組織するムーヴメントとして注目を集めている。アーティストの制作現場における展示というと、例えばヤン・フートが1986年に行った「シャンブル・ダミ(Chambres d’Amis:友人の部屋)展」が挙げられるだろう。ベルギーのゲント市の家々を舞台として、フートと面識のある国際的なアーティスト51人がそれぞれの家で制作・展示を行った画期的なキューレーションである。期せずしてこの展覧会は地元アーティスト主催の展覧会を誘発する効果を生み、オルタナティブ・スペースの代表例として知られることとなった。言わばキュレーターがアーティストの自主展覧会の起爆剤としての役割を担ったわけである。
 一方、S.O.S.は相模原に拠点を持ったアーティストが、日頃制作の行われている“実際の”アトリエ(S.O.S.ではスタジオと呼んでいる)を舞台に、キュレーターではなく“彼ら自身の手によって”企画・運営が組織されているという点で、前者とは一線を画している。昨今はTAV GARELLY2やART TRACE GARELLY3など、若手アーティストがひとつの場を基盤として活動するオルタナティブ・スペースが増加しているが、S.O.S.もその一例と言えるだろう。どれも展示活動に派生したアクティビティを、資金調達・運営手法の確立等によって実現可能にしている先例である(左記の過程は、アーティストが自律し、その表現の独立性を保持するためには欠かせないことは言及するまでもない)。
 今回、秋季に開催された「スタジオビジット・ツアー」に参加し、計9か所のスタジオを巡った。インターネットで応募した参加者が貸し切りバスに乗って、1日をかけ各スタジオを巡るというプロジェクトだ。今年度S.O.S.に参加しているアトリエは23組、アーティスト数は述べ110人を越える。相模原市の事業として運営されていた2年間を経て、S.O.S.は2015年からアーティストによって組織された団体「Super Open Studio NETWORK」がセルフオーガナイズしている。ツアー参加者は、美術大学に通う大学生、キュレーター、美術愛好者等で、なかにはアメリカのアートフェアから来たという関係者もおり、実に幅広い。貸し切りバス車内の程よい緊張感は、コーディネーターの久野さん(作家であり、「studio kelcova」のメンバー)のお話を聞くうちに和気藹々とした雰囲気に変わり、ツアーは終始和やかなムードで進行した。

 相模原は政令指定都市として県内で第3位の人口を有し4、東京都南部との県境に位置するベッドタウンである。関東有数の米軍施設拠点・工場地帯として、また多摩美術大学、東京造形大学、女子美術大学、そして桜美林大学が群立する文教地区としての顔を持ち合わせるこのエリアは、3,40代がその人口の基盤を占める5。その一成員であるS.O.S.のアーティストは、先述した大学の卒業生が多く、それに派生したコミュニティを形成しているようだ。彼らは閉鎖された工場の建物などをスタジオとして再利用し、制作を継続している。衣食住を共にするところもあれば、制作のみ、作品の収蔵庫として使用する人もいるが、ビジネスライクな関係というよりは、たまに食事を共にする友人のような(もちろん家族のようなところもあった)、程よい距離感が構築されているように見えた。
セクシュアリティをテーマにした長尾郁明氏の作品(TANA Studio にて)。ポルノビデオの女性器のイメージをグリッドに還元している。

セクシュアリティをテーマにした長尾郁明氏の作品(TANA Studio にて)。ポルノビデオの女性器のイメージをグリッドに還元している。


 久しぶりに友人の家を訪ねるような気軽さでスタジオに案内されると、アーティストが茶菓子を用意してにこやかに出迎えてくれた。或いは、こちらに脇目も振らず制作に熱中するアーティストの横を、「目撃者」として通り過ぎる時もあった。総じて言えるのは、画廊や展覧会を見に行く時のような、「見る者」と「見られる者」という明快な境界線がないということである。或いは、非日常としてのキューブのなかで、「作家」や「作品」と対峙する時のような、どこか“特別な”演出も一切無い。彼らはただ「作品を作る人」として、そこで出迎えてくれる。メンバー同士では普段どんなことを話すのか、建物を改装した時のハプニングや、近所の人が差し入れを持ってきてくれたこと、買い出しが少し不便なこと、そしてその延長線上で制作に繋がる自分のエピソードや、作品に込めた思いが紡がれていく。驚くほど自然に、隣人としてのアーティストの本音を聞くことができるのだ。お互いが話し、耳を傾け合うことで、一人ひとりの作家と対等な距離感でコミュニケーションをとることができる。もちろん先述したように、関係者も来ているので、この機会を機に自分を売り込むこともできる。拠点は相模原としつつ、銀座などのギャラリーで発表をする者も当然いる。つまり、あくまで拠点を相模原に置くことのみが共有されているコミュニティなのである。S.O.S.の代表である山根一晃氏はステイトメントのなかで以下のように述べている。「様々なアーティストが異なる目的のもとに集い、同じような風景の下、同じような食堂でご飯を食べる。そして、この相模原という場所をハブとして、各々がめざすものの為にそれぞれが自らの意思と責任のもと動いていく」。6このように、スタジオという場を起点としたメンバー同士のゆるやかで独立した個人からなる連係が、また新たなアトリエ同士の連係を生み、それが地域住民との共同体へと円環状に波及しているのだ。
 当たり前のことのようでいて、とりわけ日本の社会では、このようなフラットな関係性のなかでアーティストと対峙することは難しかったのではないだろうか。昨今東京藝大の“特殊性”について取り上げた本が話題となったように、アーティストをどこか別世界の存在として、才能や独創性という言葉で区別してしまう傾向は、未だ確かに存在する。昨今のアートフェスティバルも、地域の持つ自然や建造物、温かな人間関係等とアートの共存を目標とする傾向にあるが、そこに展示される作品は“地域の魅力を引き出すことを目的としたアート”であることが多い。それらが良いか悪いかはさておき、あるテーマをもとに輸入されたキュレーション・プロジェクトであることには変わりない。その点、S.O.S.は、相模原という場を基盤として、まずアーティストがそこに拠点を置くことから始まっている。スタジオを構え、地域の人々と隣人として交流し、生活する延長線上に作品制作がある。アウトリーチの結果としてではなく、自然発生的なエンゲージメントの結果として、アートが緩やかに内在する共同体が形成されつつある。
「pimp studio」にて。自動車修理工場を改装したスタジオで、現在11人のメンバーが集う。

「pimp studio」にて。自動車修理工場を改装したスタジオで、現在11人のメンバーが集う。



 日本のアートプロジェクトは現在、2020年のオリンピックに向け発展の途にある。それは同時に、高齢化に伴う諸地域の過疎化、地方産業の衰退、あらゆる文化施設予算の縮小等、山積する問題の切り札としてのアートが推奨されていることを意味する。官民恊働や国際規模でのプロジェクトは、様々なアーティストを奮起させ上述した危機の打開策となる可能性を持つだろう。しかしその一方で、近現代で議論されてきた先導̶追従の垂直的な構図をなぞる危険を孕んでいることは、既に論じられている通りである。S.O.S.は、先述したステイトメントのなかで、彼ら自身の活動を「アートという場のインフラ整備」だと語っている。明確なオピニオンのもとに集った集団でもなければ、地域おこしのためのプロジェクトでもない。ただひたすらに、異なるアジェンダを持ったアーティストがひとつの場に共存し、静かに、しかし着実に相互関係を構築しているのだ。元来共同体にとって、土地は彼らの“包括的な基盤”7であり、根ざす場なしにその継承は困難であった。土地を拠点とした生産活動を営み、その上で個人としての活動をも並行させる共同体は、中長期的なアートの“インフラ整備”を遂行させる上で重要なムーヴメントとなり得るだろう。その意味において、今日における表現の「場」との関わり方は共同体の命脈を左右する重要なファクターである。大地が肥沃に還るその時こそが、時代の起点となるのではないだろうか。
(文:高橋ひかり)



1 ホワイト・キューブ 現代美術用語辞典ver.2.0 http://artscape.jp/artword/index.php/ホワイト・キューブ
2 専属キュレーターがそれぞれのキュレーションによる展覧会を行うギャラリーとして2014年に始動。展示スペースのほかに、ワークショップやイベント等を行うLAB SPACEを有する。http://tavgallery.com
3 NPO「ART TRACE」を母体とした、両国にスペースを持つアーティストラン・ギャラリー。武蔵野美術大学OBOGの主要メンバーを主軸に、期ごとに参加メンバーを公募、展覧会を主に講演会やワークショップなども行われる。同母体の関連事業としては林道郎著「絵画は二度死ぬ、あるいは死なない」シリーズを出版するART TRACE PRESSなどがある。http://www.gallery.arttrace.org
4 神奈川県の人口と世帯 神奈川県ホームページ…http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f10748/
5 平成27年1月1日現在。…http://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/toukei/20998/jinko/nenrei/index.html
6 『SOSBOOK 2016』, p4
7 大塚久雄著『共同体の基礎理論』岩波書店,2000年, p12


高橋 ひかり(Hikari Takahashi)
1995年生まれ。神奈川県出身。武蔵野美術大学芸術文化学科在籍。2014年より絵画制作活動を開始、アーティストランギャラリー・ART TRACE GALLERYにおける個展等7回の出展を経て現在 に至る。アートムーヴメントにおける共同体の自律性・持続性に興味を持ち研究をすすめる。

 

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「イカロスプロジェクト」 パリ郊外留置所受刑者との交流

La maison centrale de poissy

La maison centrale de poissy


イカロスとは、父、名工匠ダイダロスの作った蝋で固めた鳥の翼によって空を飛び、迷宮(ラビリンス)からの脱獄に成功したものの、一緒に飛び立った父の忠告を聞かず、太陽に近づきすぎて蝋が溶けて墜死したギリシャ神話の人物です。

昨今の過剰とも思える資本主義と急速なグローバル化変遷の中で、イカロスの問いかける意味、迷宮(ラビリンス)の意味する事はあたかも現在の世界動向を象徴するようで、また、目の前の共同体の中にもそれが存在するがの如くに思えます。

2015年1月、「イカロス」と命名された受刑者とのプロジェクトは、フランス人作家ジュリー・ラマジュ(Julie Ramage)と共に始めました。
彼女はパリ郊外ポワシー刑務所での講師をパリ第7大学人文学社会学リサーチの一環として始めたばかりでした。ジェンダー問題を通し、傷や痕を彷彿させる写真作品を発表していた彼女は、私が行ったパリでの展覧会の出会いから、作家間での共通認識を通して交流していました。
私は、版画における複製品としての役割を消費文化というコンテクストからとらえ、社会と記憶の関わりを考えて活動していました。2014年秋、そんな活動に興味をもったラマジュは私に共同製作を提案してきたのです。

彼女はこの受刑者とのイカロスプロジェクト制作にあたり、アントナン・アルトーの作品を通して、人間や社会における、”傷”、”痕”、”記憶”を問い、またミッシェルフーコーの文献よりライティングワークの概念を提起し、肉体的、精神的、規律と強さ、客観的観察と主観的知覚の混合を通して、社会に問題提示を試みようと投げかけました。そして、この講義を作品として刑務所内と外で発表する事でソーシャリー・エンゲイジド・アートを試みようと考えていました。
留置所の参加者は十数名で各々のテーマをもとにコラージュや、詩、デッサンを提出しました。

私は彼らの作品を銅版画の特製を生かし、厳密にトレースする事で作品のオリジナリティーをフィルタリングし、版に刻まれる“傷”や“痕”、思想を記憶媒体の一つの出来事として複製化出来るのではと提案し、また受刑者本人の作品と特定されない方法で、外部とコミュニケーションする効果を見いだせるのではないかと提案しました。

アトリエでの版画製作過程

アトリエでの版画製作過程


このプロジェクトに参加する前提で、自らに問わなければならなかった事の一つに、移民としてフランスに生きる自分の所在でした。そして現実と非現実を横断するシャーマニズムのような“業”的なものを思い描きました。また、日本の裁判による死刑制度とヨーロッパの終身刑制度を通して”近代社会の共同体と倫理観とは?”との視点を思考する機会でなければと思いました。

受刑者達が刑を執行されている保護期間において、更生し再度社会活動を営む為には社会的規範を学ぶ経験と教育が必要とされます。
ただ、昨今のフランスの社会状況を考慮しても受刑者の70%弱(多くがアフリカ、マグレブ系によるイスラム教徒という事です。)が移民出身であり、その問題から来る差別感覚、貧困化、教育の行き届かない現実が犯罪への温床を生み出すとみなされていました。ひいてはフランスのテロ活動を起こしたと言えるイスラム原理主義者は、刑務所内で偏ったコーランの解釈を学び、改宗されていったという報告もなされています。
(まさにこの共同プロジェクトの制作中、アトリエから2ブロック離れた場所でシャルリーエブド襲撃事件は起きました。)

共同作業の中で特に意識した事は、受刑者の身元が特定されない事、そして全ての表現イメージは刑務所の秩序が失われない範囲に限り管理され、刑務所を司る法務局の認可を受ける事でした。一般的に自由であるはずの芸術的表現において、管理下の中で表現を考える緊張感は、とても興味深く貴重な体験でした。

2016年1月、パリ第7大学敷地内にあるベトンサロン(Bétonsalon Centre d’art et de recherché)にてイカロスプロジェクトを発表する機会が訪れました。当日は大学教授そして生徒達を含めて一般の来場もあり、作品を前に多くの意見交換を持てたのではと感じています。
ただこの展示には多方面からの問題提示をしつつも、筆跡心理学(graphology)的見地、災害心理学(désastre)、現在の社会構造や、そこから排除され、再度社会の中へ帰還する法治国家的義務を体現し考察する機会を意図したものだけではありませんでした。
何よりも体験とその経過で生じた物質(substance)を一般社会に投げかけ、そして、そこへの思考過程を共有し、人間と社会の成熟を求める事こそ、社会とアートが切り離せない関係を持っている証とされるのです。

Bétonsalon-centre d'art et de rechercheでの展示会風景

Bétonsalon-centre d’art et de rechercheでの展示会風景


ベトンサロンで発表した作品は、2016年3月、刑務所の中へとステージを変え、展覧会の準備を始める事になります。まずは身分証明書の提出と、留置所へ搬入する全てのリストを事前に提出する事から始まりました。
展示会当日、刑務所敷地内へアクセスするにあたり、8メートルはある高い壁の関係者専用鋼鉄扉が開門され、緊張と好奇心の中で準備を始めました。刑務所の中へアクセスするには、搬入物とそのリストの照らし合わせ、金銭、通信物の厳重なチェック、数回に渡るセキュリティ刑務官の監視の下、錠前の開かれた鉄柵を通過します。私達に準備された場所は、思い描いていた視聴覚室のような一室ではなく、留置所の体育館でありとても広い特殊な環境にありました。

当日、イカロスプロジェクトに参加した受刑者は外部から3人までの身内を招き入れる事が出来、また、この企画に携わった大学側の生徒も十数名参加する事が許可されていましたので、総勢70人弱が参加する事になっていたのです。全ての設置準備を終え、数人の監視員が見守る中、体育館入り口から続々人が現れるのですが、全員が私服姿だったため誰が受刑者なのか最後まで見分けがつきませんでした。
ワークショップが始まるとすぐに、一人の男性が微笑みながら私に近寄り話しかけました。
「君が版画を作った人だね、前々から思い描いていた人で、会いたかった。」
日本人が一人だったため、数人が敬愛の目と珍しさで声をかけてくれました。また、当日はその街のボランティア達が手作りのケーキ、ジュース、コーヒーの差し入れを持ってきてくれ、交流に相応しい和やかな場を提供してくれました。数時間によるこのワークショップでは様々な外部市民、受刑囚、監視員との交流がありました。

版画の原盤を貼付けた鉄の本とトレースした痕の残るカーボン紙の標本オブジェ

版画の原盤を貼付けた鉄の本と トレースした痕の残るカーボン紙の標本オブジェ


特に私にとって印象深かった事は、今でも解読する事が出来ないアラビア風文字で書かれたフランス語の詩を一人の受刑者らしき人から頂いた事でした。
「これは、日本の奈良の大仏を想い書いた物だ。君に渡す為に持って来た。」
数十枚に重ねられたカラフルな A4サイズの紙の中から、一枚を引き抜き私に手渡してくれました。その受刑者は毎日のように詩を書き残すことで、日々満たされているように私には写りました。

このプロジェクトを通して感じた事の一つに、歴史、人、記憶とは伝え、伝わる事で存在し、アートも技術もコミニュ二ケーションをとる事で存在しえるということ。そして、問い続ける事こそ、存在の意義と責任なのではないでしょうか。

受刑者とのコラボレーションによる銅版画作品

受刑者とのコラボレーションによる銅版画作品



(文: 伊藤 英二郎)
Projet conçu et dirigé par Julie Ramage – Avec la collaboration de Eijiro Ito, graveur, Bruno Héloir-Sanchez, artisan métallier, Joffrey Guérin, graphiste, et des étudiants détenus de la Maison centrale de Poissy
Julie Ramage
Eijiro Ito
Bétonsalon-centre d’art et de recherche

伊藤 英二郎 (Eijiro Ito)
1971年岩手県一関市生まれ 。1995年渡仏。版画における複製品としての役割を消費文化というコンテクストからとらえ、社会と記憶の関わりを考えて活動。
現在は写真から得られたイメージを版へ落とし込み、そこへインクを刷り込む版画製作行程によって生み出されるマチエールに近い作品を制作の主としている。

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