第7回リヨンビエンナーレ&ケルンのアートイベント『ロングナイト4』 の報告

2003年9月から2004年1月まで開催されたリヨンビエンナーレ。そして、ケルンで行なわれた一夜のアートイベントに関するレポート。

第7回 リヨンビエンナーレ報告
開催期間:2003年9月18日〜2004年1月14日まで

フランス中部に位置するリヨン市は、史跡が世界遺産に認定され、中世と現代の都市が程よくミックスした美しい景観美を誇っている。その中で、第7回となる『リヨンビエンナーレ』は、市内5ヵ所の会場で開催された。ソーヌ川に沿いに街の南北、そして西側の新開発エリアに会場は分散している。アクセスの面では、いかにもフランス的でオーガナイズがあまりされてはいなく、短期間の訪問者には非常に不便なものであった。しかし、その内容は・・と言うと、開催時が後半部、重なっていたベニスビエンナーレと違いがあったという感想を抱いた。


展覧会タイトルは、『It Happened Tomorrow』。52人のアーティストが参加し、日本人アーティストは草間弥生、デキ・ヤヨイが名を連ねている。5つの会場は、リヨン現代美術館、現代美術協会、リヨン美術館、ロレーヌ川とソーヌ川が合流する地点に位置する「La Sucriere」、ベルクール広場の隅にたたずむ「Le Rectangle」であった。「La Sucriere」は作品展示数が一番多い会場にあたり、元工場というロケーションを含め、印象深い展覧会場であった。
今回のアートデレクターを務めたThierry Raspailは、キュレテリング・チームを編成し、Dijon市を活動拠点とする“レ・コンソティウム Le Consortium”(Xavier Douroux & Franck Gautherot & Eric Troncy)、ブルッセルからAnne Pontegnie、ニューヨークからRobert Nickasを招聘した。(※Dijon市は過去20年間、市内に現代美術をプロモーションすることに先駆的な都市である。)第7回ビエンナーレの特色として、若い世代のキューレターを起用したことと、アーティストの選定に当たって多様性を重視したことに加えて、アートを経験、実践していくものとして捉え、アーティストの個人的旅、主観的行動として作品を位置づけることを強調した点にある。

リヨンビエンナーレは、1991年にその第1回が開催された。ちょうど現在の“ビエンナーレ・ブーム”に火がついた時期に当たる。周知のとおり現在では、サンパウロ、ベルリン、リバプール、イスタンブール、ヴァレンシア、プラハ、上海、ニューヨーク、釜山、台北等、全世界でおよそ2週間毎にどこかの都市でビエンナーレが開催されていると言われている。一つの展覧会が開催された途端にもう次のビエンナーレ展が話題となっていくという事態である。
リオンビエンナーレは、“展覧会 Exhibition”である事より、“展示会 Exposition”であることを選んだと言われている。ディレクターの、Thierry Raspailは、「“展覧会 Exhibition”では、何が‘現在’であるかということを明らかにしようとする事に対し、一方 “展示会Exposition”は、解きがたい‘なぞ’に向かっていくと言える。Exhibitionは、すぐさま消費されるものとなり、 Expositionは作品を陳列するのではなく、作品に生気を吹き込み、なお一層作品を強めるのだ。」と語っている。
リヨンビエンナーレは、視点の選定が独断的であるかもしれないが、決して主観的なものではない。他の大多数の大型国際ビエンナーレにつきまとう一種の妥協が少ないのもその特徴の一つであるだろう。ベニスビエンナーレという大規模国際展覧会にかかる費用と関係者の数、様々な利権等を考える時、リオンでのビエンナーレは、グラススーツ的な香りの残る手作りの展覧会という印象を強く受ける。国際的企画展を開催する本来の意味を関係者が話し合いながら、その意義を忘れないでいようという姿勢がうかがえた。

その他のプログラムとして、市内の43のギャラリー、アートセンター、文化協会等が協働し、『リゾナンス Resonance』というイベント(ダンス・劇・音楽・パフォーマンス・インスタレーション等)が催された。

※「artpress」リヨンビエンナーレSpecial Edition参照


Le Rectangle会場


リヨン現代美術館


La Sucriere会場


マイク・ケリー


(Y・K)

ケルンのアートイベント『ロングナイト4』
2003年11月8日午後7時〜午前3時まで

11月の上旬、たった一夜のみのアートイベントがケルンの市内で開催された。『ロングナイト4(4. Lange Nacht)』と題されたこの企画は、2000年に始まり今年は第4回のイベントに当たる。市内の美術館、博物館、文化協会、芸術団体、芸術家のスタジオを含めた40箇所の会場を5つのルートに分けられた市バスによるツアーが、10分毎に無料サービスで巡廻する。各会場では、美術作品をはじめとし、映画、ダンス、演劇、レクチャー、パーティなどが開催され、150ヶ所のオープンスタジオや通常、芸術活動の場ではない教会など、35ヶ所において特別展覧会が行なわれた。歴史博物館やデザイン博物館、中世美術美術館などの文化施設が真夜中、開場しているという仕掛けだ。イベント開催は市の協力の他、資金面では主に10社の大手企業からの協賛を受けている。

近年、ケルン市も財政面では厳しい時代を向えているという話だが、この様な膨大な展覧会を街挙げて、しかも一夜だけおこなうというとは驚きである。ケルンは、歴史的建造物であるカテドラル以外にも、『芸術都市』としてのイメージを持っていると言われている。時代は1960年代に遡るが、当時文化長官であったクルト・ハッケンブルクがハプニングやフルクサス芸術運動に関した壮大なイベントを支援し、数多くの芸術家や美術関係者を引きつけた。その後、彼らの間に自発的にネットワークができ上がり、ケルン芸術祭を開催するに至ったと言う。また、1951年には電子音楽スタジオが設立され、この地に現代作曲家を集めるようになり、現代音楽ケルン派として知られるようになっていく。この様な土壌があり、ケルン市内には、前衛的な芸術表現を求める観客の数が増加していった。ギャラリーは、コンベンショナルなタイプから前衛的なものまで含め、街のスケールに対してかなりの数をかぞえる。『ロングナイト4』という常識的に考えると馬鹿げたようにも思える大イベントも、作り手である芸術家、そしてそれを支える美術館、ギャラリー、コレクターが集まり、強固な文化ネットワークを作りだしていった結果であると言えるかもしれない。

※ チャールズ・ランドリー『創造的都市』参照

『ロングナイト/4. Lange Nacht 4』
URL: http://www.museumsnacht-koeln.de

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