参加型のパブリックアート Vol.5 <教 育: ホームレス、ネイティヴ・アメリカン>

ジム・ヒューパード“シュティング・バック・プロジェクト”
1989−現在

非営利団体である「シューティング・バック」は、限られた教育しか受けることのできないホームレスやネイティヴ・アメリカン等の子供たちに、教育の機会を与えることを目的として、写真作品を制作するワークショップを行っている。

プロのカメラマンをボランティアで500人以上派遣し、ホームレス、以前ホームレスであったこどもたちに写真の取り方や考え方を、ホームレス保護施設や福祉宿泊施設で指導している。
彼らの写真作品を集めた展覧会は、3年間に渡り、全米10都市を巡回し、数多くの人々に大きな感動を与え、子ども、青少年のおかれた現状やその力強い創造性を世に広く知らしめる契機となった。
専用のシューティング・バック・フォトギャラリーを有し、定期的に子ども達の作品を展示している。

ワシントンD.C.にシューティング・バック教育・メディアセンターを開設、10歳から19歳までのさまざまな問題を抱える青少年ととものワークショップを開催、実際の撮影や現像の技術を学びながら、写真という媒体を通じて、人々とのコミュニケーションの方法、さらには世界中の人々の意識を少しづつ変えてゆくことができるということを実感していった。

また、ミネアポリスにもセンターを開設、ここでは特にインディアン保留地に住むネイティヴ・アメリカンの都市部と同じ問題をかかえる青少年を対象にワークショップを行っている。

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参加型のパブリックアート Vol.4 <地域づくり>

セイエッド・アラヴィ“Where is Fairfield?”
フェアフィールド、1995

フェアフィールドの街全体を巻き込んだインターラクティヴなパブリックアート・プロジェクト。西海岸に位置するフェアフィールドという小さなまちのアイデンティティを考え、住民が自分たちの街の特色に気づくことが目的であった。5人のアーティストにより、役所や学校、郵ヨ局、銀行、新聞などプライベートとパブリックの両組織のなかで “Where is Fairfield?”という問いが投げかけられていった。

“Where is Fairfield?”は、街中の様々なスーパーマーケットや日常雑貨店の紙袋に印刷され、住民の家までそのメッセージが運ばれていった。

市役所関連の施設にも質問が記された垂幕が設置された。

市内の全学校で、各学科の教員と生徒たちはこの質問についてデスカッションをおこない、用意されたポストカード(隅 に“Where is Fairfield?”と印刷されたもの)にこの質問への生徒たちの答えを書き込んだ。ポストカードは、フェアフィールドセンター・ギャラリーに飾られ、希望者には販売された。

飛行に垂幕“Where is Fairfield?”と書かれた垂幕をつなげ、市内の上空を旋回した。

“Where is Fairfield?”という言葉が書かれたTシャツを着る高校生たち。彼らは住民にこの質問を投げかけ、またフェアフィールドの歴史を聞き取り、それをヴィデオに収めた。
市内のモール内では、この質問に答えている地元の人々をドキュメントした彼らのビデオが流された。

地元郵便局では、特別な消印付の切手が用意され、利用された。

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参加型のパブリックアート Vol.3 <公共施設、歴史>

アン・ハミルトン&アン・チェンバレン “サンフランシスコ公立図書館”
サンフランシスコ、1996

コンピューターの導入で不必要になった“インデックス・カード”を使った作品。
カードはこの図書館100年以上使用され続けた歴史を有している。
それぞれのカードには、そのカードに記されている本やそのタイトルに関連した本の引用文が様々な言語で記されている。

アン・ハミルトンの作品のテーマの一つに、アメリカにおける労働運動の歴史があげられる。歴史上に記されることのない無名の労働者たち(自分たちの手を酷使して労働した)に焦点をあてる。
彼女のプロジェクトは、多くの人手を要し、プロジェクトを行なうコミュニティからの参加者の協力るということがプロジェクトの始まりであり、多くの人々の “手”が作品を作り上げる。

参加者は200人近くに及び、移民した様々な人種が自国の言語で文章を書いた。
このコラボレーションは、人々が本をリサーチをした事を示す事ではなく、一人ひとりにとって、その本が意味を持ち、その解釈は多様なものであるという事実を表わしてゆくことであった。

これらのカードは、人々が利用できる図書館が所蔵する本の内容を明らかにし、本の世界への『窓』として表現された。 このアートワークは、図書館の3階分のフロアーで設置されている。

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参加型のパブリックアート Vol.2 <高齢者、女性>

スザンヌ・レーシー “クリスタル・キルト/ウイスパー”
ミネアポリス、1978/ラ・フォヤ、1984

—430人の高齢女性たちとのコラボレーション—

スザンヌ・レーシーは多くの人々を巻き込んだパフォーマンス活動を実践している。その活動はマスメディアを取込み、人々に社会から孤立・疎外された人々の問題を持ちこむことによってアートの社会における役割を問い続けている。

レーシーは20年間以上、社会的不平等:女性、民種、年齢、経済、暴力)に焦点を当てている。人々がつねに現実だと捉えている見識が、いかに形成されてゆき信じられているかという事をアート活動を通して明らかにすることを試みる。彼女の公共における活動の目的は、不可視なものを可視にする事、そして重要なことは共感に基づいた人々のつながりを作り出す機会を提供する事である。

公共の共有空間の中において、個人の身体が個人を越えて社会的でポリティカルな領域のメタファーとして捉える試みを行ない続けている。さまざまな機関、組織、人々が関わるパフォーマンスのプロセスにおいて、“参加性”こそ彼女が人々に望むことであり、アーティストと参加メ、両者を変化させてゆくダイアローグであると考えている。

<クリスタル・キルト>
10年間にわたる計画によってミネソタ州、ミネアポリスの市内において430人の高齢女性たちが参加するパフォーマンスが行われた。会場には赤と黄色のテーブルクロスで包まれたテーブルに黒服で身を包んだ4人の女性が座り、“死”・“老い”・“家族”・“セックス”・“人的な悲劇”などを語り合う。女性たちはお互いの腕をつないだり離したりしながらパフォーマンスを行なう。数千人の観客はバルコニーから女性たちのこのパフォーマンスを鑑賞し、予め録音されている彼女らの話とネイティブアメリカンやカンボジアの歌、雷の音、鳥のさえずりなどがコラージュされたテープを聞く。

<ウイスパー(囁き)>
カリフォルニアのラ・フォヤビーチにおいて、154人の白い服を着た65歳以上の女性が、ビーチに置かれたテーブルに4人ずつ座り、様々なことを語り合う。このプロジェクトによって、コミュニティから孤立してしまっている高年齢女性たちに、地域を越えた新たなコミュニケーションが生み出された。

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参加型のパブリックアート Vol.1 <コミュニティー・センター、教育>

ロドリック・サイキス“セント・エルモ・ヴィレッジ”
ロサンゼルス、1969年−現在

ヴィレッジは、この30年間、あらゆる人々に無料でアート、コンピューター、演劇、アフリカのドラム等のクラスを提供し、学校の壁画制作のためのワークショップを実施している。これには、ロサンゼルス文化局他の財団が助成している。
サイキスは、「すべての人々が創造する力を持っている。この創造するプロセスを私はみんなと分かち合いたいと思う。」と語り、ヴィレッジは人々が自身の創造性を発見し、展開させる場所としての役割を続け、コミュニティにポジティヴなイメージを届け、人々の広い交流の場となっている。

ロサンゼルスのミッド・シティ地区、黒人の住民が多く、その他メキシコ系、アジア系の住民が混在している地域。都市の周縁部の荒れた地域に80年前からあった10棟のバンガロー・ハウスに、1960年代半ばにサイキスが住み始め、1969年には、他のアーティストも加わり、自分たちの作品を制作、展示することにした。これがセント・エルモ・ヴィレッジの始まりとなった。

すべての塀と地面はサイキスが子ども達とともに制作した、メキシコ、アメリカ南西部の伝統的なサイケデリックな壁画で覆われている。所有者がバンガロー・ハウスの取り壊しを計画したが、St. Elmo Village Inc. という非営利団体を立ち上げサバイバルのためのアート・フェスティバルを毎年開催し、1980年には、彼らの所有となった。建築史からも注目され、その保存運動が起こっている。

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参加型のパブリックアート

Public Art with Community Participation

清水裕子 Hiroko Shimizu
工藤安代 Yasuyo Kudo

キーワード: パブリックアート, 住民参加, コミュニティ, アメリカ, Public Art, Participation, Community, USA

近年、日本でも行政に住民の意見を反映する手法が、特に都市計画におけるワークショップ等を通じて増加している。すでにアメリカでは、ここ20年来、パブリックアートにおいても、住民が様々な形でそのプロセスへ参加することが重要視されてきた。それらの事例を紹介し、その現状や問題点についての検証を試みる。

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芸術と経済的成功  —非営利芸術団体とその観客がもたらす経済効果について—

ART&ECONOMIC PROSPERITY:
The Economic Impact of Nonprofit Art Organizations and Their Audiences

2002年10月、アメリカンズ・フォー・ザ・アーツ(全米芸術団体)は、非営利芸術団体の経済効果について調査結果を発表した。報告書は、2000年から2001年の間に4,000〜300万の人口をもつ郊外の町から都市に至る91ヶ所のコミュニティを調査対象とし、33州における3,000団体と 40,000人の観客から詳細情報を収集し分析した。ここでは、その概要をご紹介する。

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ムーイン・マップ 小阪博一  May 2003

Various Locations Throughout Little Tokyo, Los Angeles: A Project Of Creative Capital

Ruin Mapは日米文化会館(Japanese American Cultural And Community Center)のビジュアルアーツ・ディレクター兼キュレーターである小阪博一氏がアメリカ最大の日系コミュニティであるリトルトーキョー(ロサンゼルス)に暮らす日系アメリカ人一世、二世たちを巻き込み制作した500点に及ぶ木版画をレストランやスーパーマーケットなどリトルトーキョーのあらゆる場所に展示しようという地域密着型パブリックアートプロジェクトである。

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ヨーロッパ・米国におけるアニマル・パレード

現在、ヨーロッパ諸国や米国において、都市の中における一風変わったアートプロジェクトが流行している。このプロジェクトとは、『アニマル・パレード』と呼ばれるもので、アーティストによってデコレーション(ペイント)されたグラスファイバー製の牛や馬、鹿、ブタ、ライオン、熊、スヌーピーなどさまざまな動物彫刻とも呼べる立体が夏の間、街のあちらこちらに展示され人々の関心を集めるというものだ。

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アメリカン・フォー・ザ・アーツ アニュアル・コンファレンス

Americans for the Arts 2003 Annual Convention

米国にて年に一回開催されるアートの全国大会。毎年6月頃開催され、会場は各都市持ち回りでおこなわれ、2003年はテネシー州ナッシュビル、来年はオレゴン州ポートランドにて開催される。

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