第4回 「Community」後半を読む (2013年11月8日)
 Education for Socially Engaged Art
 — A Materials and Techniques Handbook —

Ⅱ Community (後半pp.19〜25) を読む

    長期間のコミットが成功を生むのか?オーディエンスは予め設定できるのか?

    < C.ヴァーチャルな参加 : ソーシャル・メディア>
    <時間と努力>
    <オーディエンスに関する質問>

    ソーシャル・ネットワークはコミュニケーションに新たな流動性をもたらし、作品が継続展開してゆく有効な手段となるだろう。一方でSEAは個人、地域をより直接的につなぐ手段として盛んになっているともいえる。このように、SEAはオーディエスと密接に結びついており、そこには潜在的にオーディエンスが存在するといえる。加えて、最も成功するSEAプロジェクトは長期間にわたり特定のコミュニティのなかで活動し、アーティストが参加者を深く理解して展開された場合である。しかし、資金提供者にオーディエンスや場所の要素を予め規定される場合には、難解な作品を、関心や課題が全く異なるコミュニティへ売ろうとする結果になることもある。そのためにもSEAにおいて、アーティストはオーディエンスを明らかにし、彼らに伝えたいメッセージを、自身のなかで明確にしておかなければならない。

    ディスカッション

     

  • ヴァーチャルな社会環境がソーシャル・ネットワークを強化して、社会的な活動やSEAに与える影響は大きいが、SEAはヴァーチャルな関係性が全盛のなかで、アーティストとより直截な関係により、参加者が時間や空間を共有しコミュニケートする手段として重要な役割を担っているといえる。
  • 著者は「SEAは長期間にわたり特定のコミュニティにコミットする場合成功する」と述べている。
  • そのベストな例: CuratorであるMorinがLaosやShakersのコミュニティに数年間介在して、複数のアーティストを招聘してプロジェクトや展覧会をおこなうというもの。妻有など、日本でおこなわれている活動と同じなのか、違うのか、他の事例を含めて精査する必要がある。
  • 著者が「オーディエンス」をどのレベルで捉えているのか?「参加者」と述べる場合とどのように違うのか、その辺りが明確にされていない。より精査して、レベルにおける差異を検討すべきである。
  • 資金提供者によって目的、期間や参加者のフレームが規定されお膳立てされている場合、アーティストが独自のモチベーションをもつことが難しいし、予定調和的な結果になってしまうことが多い。
  • 特に、海外に比較して、日本の場合はアーティスト主導の活動が少ない。そのなかで、アーティストが話しかけたいオーディエンスと伝えたいコンテクストを明確化することは可能なのだろうか?
  • アーティストが社会における問題意識に関心を寄せ、自らのメッセージを伝えるべき相手を想定できるか?それは教育やトレーニングの課題ともいえるだろう。
  • これはアーティストの存在価値を考える上で重要な要素のひとつだといえる。
  • (モデレーター 清水)

| |