私たちは、福武財団に設置されたアーカイブセクションによるアーカイブ事業への支援活動を、2024年度から続けています。昨年度の活動はこちらのレポートにまとめています。
2025年度は、「ベネッセアートサイト直島(BASN)」が活動を始めてから40周年を迎える大きな節目の年です。また、アーカイブセクションの設立から10周年でもあり、改めてアーカイブの位置付けを見直すタイミングでもありました。
2024年度の活動では、アーカイブセクションの活動の意義や目的を、わかりやすい言葉でまとめることを目指しました。BASNの活動を記録として残すだけでなく、その記録を必要とする人に届けて活用してもらうには、アーカイブ活動への理解を広めることが欠かせません。そこで昨年度から継続して取り組んでいるのが「アーカイブポリシー」の策定です。
アーカイブポリシーとは、資料の収集方針や対象など、アーカイブ機関の基本的な考え方や指針を簡潔に示すものです。オーストラリアのビクトリア州公文書館が公開するガイダンスでは、組織の規模にかかわらず作成すべきアーカイブの基盤として位置付けられています。

ビクトリア州公文書館のガイダンスページ
アーカイブに携わる人にとっては自明でも、その価値や意義を第三者に伝えるのは難しいというのは、多くのアーカイブ実務者に共通する悩みと言えるでしょう。ポリシーをまとめることは、ミッションや位置付けを文章として整理することができ、自分たちの活動を見つめ直しながら、他者とも共有できる情報として活用できることが期待できます。
ポリシーの策定は日本ではまだ一般的ではありませんが、海外のアート機関ではウェブサイトで公開している例が多くあります。そうした先行事例を収集しながら、ポリシーに必要な要素を検証していきました。
上に挙げたビクトリア州公文書館のガイダンスをはじめ国内外の文献を参照しつつ、重視したのは海外の項目をそのまま取り入れるのではなく、アーカイブセクションの実務に即した、持続しやすい内容にすることです。2025年度に実施した調査の成果は「リサーチ資料」としてまとめて、アーカイブセクションの皆さんと共有しました。

2025年度に作成したリサーチ資料
アーカイブセクションの皆さんとは月1回のオンラインミーティングを続け、ポリシーの検討を進めました。議論の中では、ポリシーの項目とあわせて、セクションが抱える課題についても話し合いました。
10年間の活動を通じてBASNのアーカイブ構築は着実に進んできた一方、現在進行中の活動で作成される資料をどう受け入れるかという新たな課題も生まれています。こうした課題に向き合うには、組織全体のスタッフの協力も不可欠です。ポリシーがアーカイブセクションと他のスタッフをつなぐ橋渡しになることを意識しながら、検討を重ねました。
また、外部の有識者からも客観的な意見や参考文献、アート以外の先行事例などの助言を得ることができました。紹介いただいた文献をもとにしたワークショップでは、アーカイブ構築を実践する上での課題を洗い出すことができ、ポリシー策定と今後の方向性を考えるうえで重要なステップとなりました。

月1回のオンラインミーティング
今年度は、ポリシーに必要な要素や項目など基礎的な部分を一緒に検討しながら、具体的なテキストの執筆はアーカイブセクションの皆さんに担っていただきました。私たちは文章の校正や内容へのフィードバックという形でサポートしていきました。
ポリシー策定で大切にしたのは、先行事例に倣った「模範解答」ではなく、現場の実践から生まれる言葉です。10年間の活動の中で積み上げられた工夫や苦労こそが、アーカイブセクションならではの表現につながり、第三者にも届く文章になると考えていました。
今年度の活動を経てまとめられたアーカイブポリシーは、推敲を重ねながら現場の実践者の言葉で書かれた表現でまとまっていき、10年の節目にふさわしい形になりました。このポリシーを一つの起点として、組織の内外でアーカイブへの理解が広がり、持続的な活動へとつながっていくことを期待しています。