福武財団の組織内に設置されたアーカイブセクションでは、これまで10年にわたって福武財団が取り組む「ベネッセアートサイト直島(BASN)」の活動記録のアーカイブに取り組んできました。私たちは、2017年度に実施した「ベネッセアートサイト直島アーカイブ調査」をきっかけに、アーカイブセクションの皆さんとは定期的に意見交換を続けています。
アーカイブセクションの活動については、2020年度に取り組んだ「エイ!エイ!オー!(Art Archive Online)」のVol.6「オンライン・ヒアリング」にもご協力いただき、その際に伺ったお話の一部を動画でも紹介しています。
アーカイブセクションの皆さんが長年にわたって真摯に取り組んできたアーカイブの実践は、2018年3月の現地調査や2020年度のオンライン・ヒアリングでも伺ってきたように、先駆的な取り組みとして高く評価できるものです。
一方で、10年の歩みを振り返り、アーカイブセクションの活動の位置づけや目的を、明確な言葉として伝えることに苦労されているという課題についてご相談を受けました。
アーカイブは、記録を残すだけではなく、その記録が活用されることも大切です。保存と活用が両輪として機能するためには、アーカイブの「ミッション(役割)」を明確にし、それをわかりやすく伝えることが欠かせません。2024年度のプロジェクトは、こうした課題の共有からスタートしました。
2024年秋からは、アーカイブセクションの皆さんとともに、ミッションづくりに向けたミーティングを重ねてきました。定期的に実施するオンラインでの意見交換に合わせて、私たちも国内外の先行事例を調査し、課題の検討に必要な資料を作成しました。
アート団体において、組織内にアーカイブ専門の部署を設けている例はまだ多くありません。先行事例の共有やディスカッションを通じて、アーカイブのあり方を多角的に見直し、少しずつ言葉として形にしていきました。このような言葉をまとめることで、アーカイブセクションの活動に対する理解を広げるきっかけになり、さらにアート団体におけるアーカイブ活動のモデルケースにもなりえるでしょう。
フェリーから眺める直島の風景
今回の視察では、島内の美術館やギャラリーを訪れる時間もあり、「ここにしかない」アートを体感することができました。ベネッセアートサイト直島は国内外から多くの人々が訪れる場所であり、その活動に関わるアーカイブは後世に伝えるべき貴重な記録であることを、現地での鑑賞体験を通じて改めて実感しました。
瀬戸内「 」資料館/宮浦ギャラリー六区でアーティスト下道基行さんにヒアリング
特に、直島におけるアート活動が地域コミュニティと深く関わっている点は、現地を訪れても感じることができ印象に残りました。BASNのアーカイブ資料は、アート・アーカイブとしての価値にとどまらず、地域に根ざした「草の根」の記録として、コミュニティ・アーカイブとしても捉えることができるかもしれません。
2024年度を通じてアーカイブセクションの皆さんと重ねてきた議論は、将来的なBASNアーカイブの活用に向けた一つのマイル・ストーンとなるものです。今後も、ベネッセアートサイト直島におけるアーカイブ構築を、未来を見据えたかたちで支援していきたいと考えています。
直島の本村地区の街並み