ART & SOCIETY RESERCH CENTER

P+ARCHIVE

2013.03.31

P+ARCHIVE2012 第9回ワークショップ 報告

2月27日は「デジタルアーカイブ」をテーマとして、デジタルアーカイブに関わる活動をされているゲストスピーカーの方をお二人の話を伺いました。それぞれの方が違った視点でトークをしていただき、多角的な視点でデジタルアーカイブを考えることができました。

第9回ワークショップの講座風景

第9回ワークショップの講座風景

まず、前川充さんのトークから始まりました。前川さんは、先端的な視点で新しい試みのデジタルアーカイブを考えれおられ、将来性のある話を伺うことができました。特に、有名無名に関わらず作家の作ったものを、文化活動全般のアーカイブとして残すことがデジタル技術を用いて実現できないかという点で、デジタルアーカイブの可能性についてお話を伺いました。
タグ付けは日英のバイリンガルで進めるべきであるなど、将来的な国際化も視野にいれているそうです。最近注目されているセマンティックなウェブ構造で、アーカイブされた記録がウェブ上で結びつけられるアルゴリズムの開発や、Wikipediaに代表されるウェブ上の総合知の在り方についても提案されていました。
また、第5回レクチャーでも触れられたクリエイティブコモンズについての考えも話され、これからアーカイブが広く普及し様々な記録が残されるようになるために、その知財と著作権の関係が既存の考え方では限界があるという印象を改めて受けました。

続いて、中島光康さんのトークとなります。中村さんは、P+ARCHIVEのデジタルアーカイブのシステムを設計された方です。デジタルアーカイブのページはこちらのリンクからご覧いただけます。
そもそも目録化された資料がどのようにデジタルアーカイブ上で検索できる状態で公開されるのか、そのシステム構築のプロセスについての実測的な話を伺うことができました。
システムの構築には様々なソフトウェアやコーディングの選択があり、「どのように見せたいのか」「何を見せたいのか」というニーズにあわせて適切なシステムを作る必要があります。P+ARCHIVEのデジタルアーカイブのシステム設計の段階でも、例えば図書館の書籍検索システムのOPACなども検討されたそうです。
しかし、アートアーカイブは他のアーカイブとは異なり、やはり定義のやり方が特殊であるといえます。現実的に予算にも制限がある中で、いかに求めるパフォーマンスを得られるのか、最終的に選ばれて機能している現在のデジタルアーカイブのページ構造(drupal)に至るまでの苦労と経緯を伺いました。

最後に、ゲストスピーカーのお2人の対談を通じてデジタルアーカイブのこれからを受講生と共に考えました。いわば、「整理学」ともいえるアーカイブでは、プロジェクトに伴い発生する大量の資料を整理・管理し、また検証・評価に役立てていくためにも、今後ますますデジタルアーカイブの重要性が高まっていくでしょう。

ウェブ上で公開されているさまざまなデジタルアーカイブの構造は創造性に富み、マニュアルが確立されていないアーカイブの世界では、その活用法やインターフェイスも様々であり大きなポテンシャルを感じられます。

先進的な視点で提案してくださった前川さんのトーク、実測的な視点でその構造をお伝えしてくださった中島さんのトーク、その二つの視点でデジタルアーカイブをテーマとした本日のトークセッションは、多くのヒントを見つけられた時間であったと思います。

デジタルアーカイブの構築には専門的な知識を要することですが、その構造を理解するためにも、広く共有されるべき知識だと思いました。

(P+ARCHIVE 井出竜郎)