ART & SOCIETY RESERCH CENTER

P+ARCHIVE

2012.06.06

P+ARCHIVE2012 第1回レクチャー
「リアルARTプロジェクト・アーカイビング実践」報告

第1回 キックオフミーティング・日比野克彦レクチャー


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2012年レクチャー&ワークショップがキックオフ!今年度はより実践的に、実際のアートプロジェクトのアーカイビングを目標としていますが、初回はそのアートプロジェクト「種は船」を監修している日比野克彦さんによるレクチャーでした。 前半はまず、「種は船」プロジェクトの今に至るまで。

そもそもこのプロジェクトの芽生えは2003年、越後妻有の第2回大地の芸術祭で、住民の方々との交流の中で朝顔を育てるという取り組みが始まったことから。その種を収穫→来年も植えることができる→永遠に続くプロジェクトの始まりとなり、次第に水戸、次に金沢、横浜、舞鶴へと種が運ばれることとなり、運ぶ側と受け入れる側の交流も広がっていったということでした。「それぞれの土地でとれた種を見ているとその土地の人々の顔が浮かんでくる」→「種の形が船に見えてきた」→「人を乗せて航海」まで発展。プロジェクトが進行していくダイナミズムと、また土地の方々との心の交流という繊細な部分があることを感じました。

初回レクチャーの様子

次に「種は船」プロジェクトのTANeFUNeが、5月に舞鶴を出航した様子と、その船がどんな種を蒔いていったのか、この3年間で何が起こってきたのかということを記録するアーカイブプロジェクト「船は種」について、最新の映像とともにお話しいただきました。

船が港についている様子や、まず船の安全を確認しなければいけない様子や、そのために随行されている造船会社の方2名、海図を確認している日比野さんや、携帯で天候をチェックしているスタッフの方の映像などなど現場の様子を見せていただきながら、「ものを作ることではなく、ことをおこすことを記録することの悩ましさ」を提示していただきました。この映像はプロジェクトの記録を担当されている大阪のRecipさんによるもので、撮影側の意図が反映されにくいレモスコープ(remoscope:[固定カメラ/無音/無加工/無編集/ズーム無し/最長1分]に則り撮影された映像)で、舞鶴の人にたくさん見てもらいながら話を引き出す、インタビューのきっかけのための映像ということでした。

また、無事に航海が進む中で生まれた、海の向こうへ持っていきたいものを集めて運ぶワークショップ「TO THE SEA」について、車の免許と船舶免許の違いなどについて、とお話しが進むにつれて、この「種は船」プロジェクトの意義、社会に伝えていきたいことはどういうことかを私たちも掴むことができたのではないかと思います。日比野さんは、このようなアートプロジェクトを評価することについて、絶滅危惧種だから助成金で保護しなければ・・ではなく、正しい評価の仕方が今後必要で、そのためにもアーティストや活動する側が記録に残し発信していくことに積極的にならなければいけないという思い(決意)を語って下さいました。そして「走りながら分類していく、これが今回のリアルARTプロジェクトアーカイブ実践なのです」「絶対に必要な講座です!」と熱く締めくくって下さいました。

その後受講生の方からの質問タイム。Q「プロジェクトの費用はどこからでているのか」Q「種は船プロジェクトのファシリテートはどうだったのか」 さらに具体的にアートプロジェクトへの理解を深めることができました。

また日比野さんからは「アート≠芸術 アート=芸能 と訳されるべき」、 「なぜ社会がアートプロジェクトを求めているのか→①地域に祭りが少なくなっていること②美術教育が正しくないと思われる現状があること。」といったお話しまでしていただき、こちらの内容も個人的にも大変興味深いお話でした。

最後はTANeFUNeが出航している様子のビデオ映像(日比野さん作詞のBGM付き)がもう一度流れる中、日比野さん退場され、初回レクチャーは終了しました。

以上

(P+Archive所員 川口明日香)