ART & SOCIETY RESERCH CENTER

P+ARCHIVE

2012.07.09

P+ARCHIVE2012 第4回レクチャー
「文書のライフサイクルと管理」報告

6月27日のレクチャー風景

2012年6月27日、桜美林大学非常勤講師の柴田葵さんをお迎えして、第4回レクチャー「文書のライフサイクルと管理」が開講されました。

まず、文書が生まれてから廃棄、もしくは永年保存されるまで、どのようなライフサイクルをたどるのかをお話いただきました。
前回斉藤先生にもお話いただきましたが、文書は「作成」→「配布・伝達」→「参照・活用」→「保管・保存」というライフサイクルをたどります。
組織で活用されていく中で評価選別が行われ、廃棄、または保存されていきます。
どんなに貴重な資料も生まれた時には「アーカイブズ」にはなりません。活用され、永い期間保存されていく中で、社会の記憶装置や情報・知的資源として価値が出てきます。

次に、アーカイブズの基本的な概念や原則をお話いただきました。
「収集」→「評価選別」→「記述編成」→「保存」→「公開」というアーカイブズの基本業務の流れについて説明していただきます。
アーカイブズの業務は、「物理的な保存作業」と「分析的な整理作業」、大きく2つに分かれます。
この2つの作業のそれぞれ4つの原則について解説していただきました。

組織が活動している中で記録が生み出されるわけだから、生み出した組織と記録は切っても切れない関係にあります。
また、個々の記録はばらばらですが、組織で生み出され、活用され、保存されてきた、記録のまとまりであると考えることもできるのです。
とにかく原形や出所がちゃんとわかるように残しておくこと、一度決めたことは変更しないこと、が鉄則なのだな、と分かったところで次は「利用・閲覧」に関する原則についてです。
文書館の資料は誰もが国籍などで差別されることなく、簡単な手続きで閲覧できるようにしなけれならない、という国際的に定められた考えがあるそうです。

そして次に「評価選別」について。
そもそも評価選別は必要か?という問いから始まります。
評価選別については、大きく分けて5つの考え方があることを学びます。

消極的必要論
「保存庫の物理的制約がある以上、評価選別はやむをえない」
確信的必要論
「必要な記録を除去し、後世にとって価値あるものを厳選すべきである」
消極的不要論
「廃棄処分にした文書が、後に重要なものであると判明するかもしれない」
条件付不要論
「物理的制約から解放されたならば、コストを投じてまで評価選別を行う必要はない」
確信的不要論
「評価選別はファシズム的行為。全てを残すべきである」

あなたはどの考えに近いですか?柴田先生からの問いかけ。う〜ん、かなり悩んでしまいます。
なんだか自分の引っ越し作業のことを思い出してしまいました。

アーキビストが評価選別に関わるべきか、関わらないべきかという考えも分かれるようです。
何が正しい判断基準と言えるのでしょうか。時代背景や政治によってもアーキビストの判断は変わってくるでしょう。
どんな状況であれ、選別した人がどんな理由で選別したのかを、はっきりさせておくことが重要とお話いただきました。

グループディスカッションの様子

選別評価には様々な考え方があると知ったところで、実践ワークショップに移ります。
「評価選別は必要か」という議題で、先ほどの5つの考え方のうちどの考え方に近いか、グループごとにディスカッションを始めました。
評価選別は必要か、不要か、積極的か、消極的か、というマクトリスの中に、グループの回答を位置づけていきます。
グループごとの回答もまばらで、講義に参加されていた斉藤先生、筒井先生の回答も真逆のものでした。
柴田先生は、こんな短時間で答えを出せるような問題ではないし、何を基準に記録資料を残していくべきなのか、ということは未だ実験段階と話されます。
現代では様々なメディアで膨大な記録が生み出されています。
それらをどうやって未来に残していくべきなのか、そもそもその選別は必要なのか、と考えていくこと自体がこれからのわたしたちにとって必要なことなのかもしれません。

以上

(P+archive受講生 相曽晴香)