
AI技術が日進月歩で発展していく中で、カジュアルに意見交換できる場として立ち上げた「AIとアーカイブ勉強会」。2025年夏から、2か月に1回程度のペースで開催してきました。
初回は、参加者それぞれのAIに対する考えを共有することからスタートしました。また、前川さんより、アーカイブ活動におけるAI活用の目的や背景を整理したうえで、海外の先行事例を紹介いただきました。
この回で議論された「AIがどこまで関与したか」を明示する「透明性」については、その後の勉強会でも継続的に考えていく視点となりました。
第2回は、ワークショップ形式で実施しました。参加者が持ち寄った画像データに対し、AIを用いてメタデータを生成するトライアルを行いました。
嘉村さんが作成したシステムとプロンプトに画像を読み込ませると、メタデータ生成が高速に行われます。被写体の特徴のタグ化や、建物に隠れている看板の文字を推測してテキスト化するなど、その実用的な精度に参加者からも驚きの声が上がりました。
年明け最初の第3回では、2026年の勉強会の方向性についてディスカッションを行いました。AIに習熟した実務者とアーカイブの実践者の橋渡しという本勉強会の目的に立ち返り、それぞれの立場からAI活用のアイデアを共有し、意見交換を行いました。
また、平野さんによるEuropeana Foundationの論文紹介や、前川さんによるAMIA 2025の報告を通じて、最新の動向を共有しながら議論を深めました。
初回から第3回にかけては、AIについて知識として学ぶことと、実際に手を動かして使ってみることの両軸で進めてきました。また、ChatGPTとGeminiを比較するなど、一つのシステムに依存せず、複数のツールを試しながら検証していきました。
日々AI技術が更新されていく現状においては、ケーススタディを重ねながら「何ができるのか」を共有し、実践的に検討していく段階にあると考えています。
勉強会では、AIの活用を考えるうえで倫理的な観点を見失わないことを重視してきました。国内外の先行事例を見ても、「最終的な意思決定は人間が行うことが大切」であることが繰り返し指摘されています。
勉強会を始める頃に読んだDISTANCE.mediaのニュースレターで、情報学研究者のドミニク・チェンさんが「生成AIとの付き合い方」について次のようにテキストを書いていたことが印象に残っています。
プロンプトを書いて実行し、出力を受け取る度に「なにがトレードオフになっているのか」という思考チェックをかけています。その度に、「これはOK」「これはNG」という判断を下しています。面倒くさいですが、テクノロジー研究としては面白い問いだと感じています。[1]
勉強会を続けながら、AIによるアウトプットには「必ず人のチェックを入れる」という前提を心に留めておきたいと思います。
AIとの付き合い方を考える一つの試みとして、勉強会で注目されたのが「CC Signals」です。これは、国際的非営利団体クリエイティブ・コモンズが2025年夏に発表した新たなフレームワークで、「自身のコンテンツが機械によってどのように再利用されるかについての意向を表明できるようにするもの」と説明されています[2]。
「CC Signals」は、コンテンツの作成者がAI利用に関する意思表示ができる手段として新しい概念であり、今後どのように社会に普及していくかはまだ分かりません。それでも、AI技術が創作活動の中でどのように位置付けられるのか、現在進行形で活発な議論が行われていることの一端が現れていると言えるでしょう。
引き続き、「AIとアーカイブ勉強会」を通じてさまざまなトライアルを重ねながら、AIとアーカイブのよりよい関係のあり方を探っていきたいと考えています。
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[P+ARCHIVEディテクター井出]