ART & SOCIETY RESERCH CENTER

P+ARCHIVE

2025.04.24

ワークショップ「かぞえあう」

2023年の調査以降、袋田病院のアーカイブ構築に向けて、ROKUROKURIN合同会社の皆さんと意見交換を重ねてきました。

アーカイブ構築の課題点

明らかになってきたのは、アートプログラムの中でうまれた利用者の作品をどのように扱うか、という点が大きな課題になっているということです。作品に関する情報は、プログラム担当者のもとに集中されており、それが病院内で十分に共有されていない状況があります。まずはこの情報を共有していくことでアートプログラムに対する理解を広げることができると考えました。

ただ、これまでにつくられた作品は膨大であり、作品を一つひとつ目録化していく作業は、長い時間と多大な労力が必要となるでしょう。それでも、まずは「できることから始める」ことが大切です。そこで私たちは、作品数を把握することを起点として、作品を「数える」作業から始めることを提案しました。

ワークショップの会場「アトリエホロス」

ワークショップ「かぞえあう」

ワークショップのデスク並べられた藤田うさぎさんの作品


この提案を受けて、遠藤純一郎さんを中心とした作品整理チームが結成され、実際に作品に触れながらグループ分類の方法を考えて、数を数える作業が続けられてきました。
今回のワークショップでは、この1年間の整理作業の経過を紹介するとともに、参加者の皆さんとともに作品に実際に触れ、数を数え、意見を交わすことを目的としました。

ワークショップ「かぞえあう」は袋田病院のアトリエホロスを会場として3月22日に開催されました。当日は、アートや精神医療、支援活動などさまざまな分野から多様な背景を持つ方々が集まりました。作品に触れることをとおして、袋田病院の活動や、作家の積み重ねてきた時間を感じながら、参加者同士で対話して作品を「かぞえあう」作業が共有されました。

当法人からは井出がゲストとして参加し、作品整理を通じて見えてきた成果や、こうした作業がアーカイブにどう結びつくかについて、アーキビストの立場からコメントしました。参加者の皆さんが関心を持ち、考えるきっかけとなるような対話が生まれる助けになるように努めました。

ワークショップの流れを説明するホワイトボード

ワークショップで得られた気づき

遠藤さんが苦労して作品のグループ分けを考えて試行錯誤してきた話を伺う中で、「アーカイブは実践することに価値がある」ことを改めて実感しました。また、ディスカッションで寄せられた参加者からのコメントからも、多くの学びを得ることができました。

ワークショップ会場のアトリエホロスに準備された作品たち

作品を一つずつ数えるという行為は、「一つの作品」に丁寧に向き合うことでもあります。そこから「どのように保存するか」「どのように作家や作品について言葉で伝えるか」といったアーカイブに関わる本質的な問いに繋がっていくことを、今回のワークショップの参加者と共有することができました。

春の陽気に包まれたアトリエホロスの穏やかな空間の中、参加者の皆さんとともに心地よい時間を共有できたことは、今後のアーカイブ活動にとって大きな一歩となったはずです。ここで生まれたつながりが、袋田病院のアーカイブに新たな可能性をもたらしてくれることを期待しています。