ART & SOCIETY RESERCH CENTER

P+ARCHIVE

2012.02.29

P+archive2011第5回ワークショップ「アーカイブズの公開と法」報告

第五回WSの様子

第五回WSの様子

最終回となる第5回ワークショップでは、作田(さくた)さんと生貝(いけがい)さんから『アーカイブズの公開と法』というテーマでお話しいただきまし
た。まず作田さんから、「アーカイブと人格権・パブリシティ権」という内容で、アーカイブと公開時における著作権、個人情報保護とプライバシー、パブリシティ権、展示権、公表権、人格権をご説明いただきました。トラブルに備えるために、アーカイブと公開に関わる組織は、それぞれのプライバシーポリシーを作成して公開した方がよい、とのアドバイスがありました。

次に生貝さんから、東京芸大総合芸術アーカイブセンターの紹介と関連する論点についてご説明いただきました。同センターは数十万点の大学保有芸術作品のデジタル化のために2011年4月に発足し、部分的に近日公開予定だそうです。アーカイブ対象として美術収納品の他、音楽演奏なども含まれており、公開に際しての著作権と使用料支払いや、著作者隣接権、価値の高い作品の公開基準と管理権、などの課題と、それぞれの対応案の説明がありました。生貝さんからはさらに、「諸外国のアーカイブ政策と制度的課題」という内容で、グーグルブック事件がもたらした世界の書籍アーカイブ・ブームや、国立国会図書館近代デジタルライブラリーの事例、福井健策先生の「全メディアアーカイブを夢想する」という提唱、欧州デジタル図書館(Europeana)などのご説明がありました。その中で孤児(orphan)作品の取り扱いや、集中権利管理の拡大、公共貸与権制度等が論点となっており、特に孤児問題では、一国で認められたらEU全体で利用可能と定めた「EU孤児作品指令案」や、孤児作品はPublic DomainとみなすとするGoogle案、米国で期待されている代替案、生貝氏の私案の紹介がありました。

最後にお二人との質疑応答があり、両氏が携わるクリエイティブ・コモンズの活動内容と、ccライセンスやPDマークの説明がありました。デジタルアーカイブと公開における著作権を中心とした権利関係の問題は大変重要であり、世界中で多くの議論と提案と検証が行われていることを学びました。問題は多いものの、自分自身も当事者として勉強かつ関与し、世界の関係する人々と協力して乗り越えていかなければと決意を新たにした次第です。

(P+archiveゼミ受講生 前川充)