トップページにアイキャッチ画像を表示させたい時に選択します。

【SEAラウンドトーク】
「Vol.1 アートの楽屋 –アーティストの視点から考えるアートと社会の関係–」


※定員に達しました。多数のお申し込みをありがとうございました。

SEAラウンドトーク

ソーシャリー・エンゲイジド・アート ラウンドトーク
アーティストは今、ソーシャリー・エンゲイジド・アートをいかに捉えているのか?
一線で活躍するアーティストによるトーク&ディスカッション・シリーズ

Vol.1
「アートの楽屋」
–アーティストの視点から考えるアートと社会の関係–

イギリス、ノルウェイ、オランダ等、ヨーロッパを中心に、分野横断的な表現活動をしてきたアーティスト清水美帆さんを話し手に迎えます。
清水さんは20年間ほどの活動を通して、アーティスト、作品、観客との関係性を考え続けてきました。時代背景、制作環境、人々の考えの違いや変化に伴って作品のスタイルはいかに変わるのか? 作品を発表することを通してどういう関係性を観客や社会と築きたいのか? ソーシャリー・エンゲイジド・アートに対する清水さんの考え方を、作品事例と合わせて語っていただき、参加者とともにディスカッションをおこないます。

開催概要

日 時 2017年10月6日[金]18:30–20:30
会 場 Arts Chiyoda 3331 1階101 (www.3331.jp/access
定 員 15名(先着順) 
参加費 500円(コーヒー/資料代込)

ゲストプロフィール

清水 美帆|Miho Shimizu [アーティスト]
1976年、東京生まれ。ゴールドスミス大学(ロンドン)で美術を学び2001年に卒業。ピエット・ズワルト・インスティテュート(ロッテルダム)への交換留学を経て、2011年にオスロ芸術大学で修士課程を修了。
部族、都会の両方に見られる衣装や儀礼に着目し、それらを通じた個人や社会での変容をテーマに制作している。制作した衣装や小道具は、役者、ダンサーのパフォーマンス、映像作品に使われている。ソロ活動に並行して取り組むオィヴン・レンバーグとのコラボレーションでは、多彩な芸術表現を通して旅の経験を物語っている。www.dangermuseum.com/ja

お申込み&お問合せ

メール|info@art-society.com
件名を「10/6 SEAラウンドトーク」とし、お名前、ご所属、同伴者の人数をご記載のうえお申し込みください。
※いただいた個人情報は、適切に責任を持って管理いたします。

フライヤー(PDF)のダウンロード


主催:NPO法人アート&ソサイエティ研究センター

| |

オフィス移転のお知らせ

この度、弊法人は業務の効率化を考え、6月1日より、オフィスを下記に移転いたしました。
新事務所はアーツ千代田3331からもほど近く、JR御徒町 、上野広小路駅、末広町駅から徒歩5分圏内ですので近くにお越しの節は、ぜひお立ち寄りください。
今後ともこれまでどおりご支援ご交誼を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

【移転先】〒110-0005 東京都台東区上野3-13-9 原田ビル201
Googleマップ

IMG_1315

| |

『美術手帖』5月号 SEA展のレビューを問う

2017-05-19 08.05.58

 NPOアート&ソサイエティ研究センターが主催した「ソーシャリー・エンゲイジド・アート:社会を動かすアートの新潮流」展のレビューが『美術手帖』5月号(2017年4月17日発売)に掲載された。「地域アートの延命措置」と題した筆者の主張には見過ごせない誤りがあり、さらに著作権を有する作品画像の掲載許可手続きにおいても編集部への疑問が残る。
 私たちは、5月号発行後すぐに美術手帖編集長と美術出版社社長にたいし、電話と書面により本件の真意を尋ねた。しかし回答願いの期日が過ぎても返答を得られないため、この場を借りて2点の問題を公開したい。

1. レビューにおける事実誤認と根拠を示さない批判

 レビューの筆者は黒瀬陽平氏であった。
前提として、評論は筆者の表現の場であり、「表現の自由」は守られる権利であるが、編集部は出版の前に内容に誤りがないかチェックする必要があるのは言うまでもない。私たちは黒瀬氏より直接取材を受けていない。黒瀬氏がレビューの冒頭で示したSEAの定義だが、これは本展覧会を評論する上で、最も重要な前提となる。
「SEAは「関係性の美学」(ニコラ・ブリオー)から不必要と思われる美学的要素を削ぎ落とし、より直接的に現実社会に関わり、何らかの社会変革(ソーシャルチェンジ)を起こそうとするアートの実践だとされている」
とあるが、SEAとは美学的要素を「削ぎ落とし」、捨て去ったものではない。黒瀬氏も本文で紹介している、パブロ・エルゲラの言説にもとづけば、SEA とは美学的要素とそれ以外の要素(社会的・政治的等)を併せもったものだ。
SEAの定義からしても、筆者がこの分野への基本的な知見を欠いており、国際的な流れを理解していないことは明らかであり、日本で初めて本格開催されたSEA展の論者として的を射た批評ができる人物ではないといえる。美術手帖がなぜこの人選をおこなったのか疑問である。
 さらに作品の評価についても、黒瀬氏は、スザンヌ・レイシーの作品について、具体的な根拠も示さず「劣化」と批判し、同様に、若木くるみの作品を「幼稚」と結論づけている。こういった言説が一流の美術評論誌で活字になることは、作家の評価に大きな影響を与えるわけで、そのことについて編集部は最大限の注意を払うべきである。

2. 作品画像の掲載手続きへの疑問

 私たちは美術手帖編集部の依頼により作品画像を提供した。大きく掲載されたスザンヌ・レイシーの作品をはじめ、作家の著作権は存在しており、展覧会紹介の目的に限って、作家に代わり私たちが画像提供している。最終確認として送られてきたレイアウトには、黒瀬氏の原稿はなく、独立した記事のごとく片ページのみPDFで送られてきた。
 だが、実際は黒瀬氏の原稿と写真は、見開きでひとつの記事であった。スザンヌ・レイシーの写真は、編集者から最初に希望されたものではなく、後になって追加依頼があったもので、もし原稿を見ていたなら、私たちがレイシーの写真を提供することはなかった。

 今回の展覧会は、文化庁、アーツカウンシル東京、ドイツ文化センター、オランダ大使館、資生堂などによる助成と、展覧会の主旨に賛同する多くの個人の協力を得て実現したものだ。アートが人々の生活から乖離したものではなく、生活そのもの、生き方そのものがアートに直結しているとする「Living as Form展」(2014年)の開催から3年目に、この「ソーシャリー・エンゲイジド・アート展」の実現に漕ぎつけることができた。それはひとえに、実社会と向き合い、いかにその課題に向き合えるのか、日夜模索しているアーティストの実践を伝えたいという思いからであった。そのために、私たちはSEAに関する調査研究をおこない、小規模の展覧会や関連イベントを実施し、パブロ・エルゲラの著書の翻訳出版などをおこなってきた。
 現在国内で開催される地域でのアート・プロジェクトでは、人のつながりや絆づくり、人々の内発的な表現行為に焦点が当てられているが、社会的に弱い立場にある人々、過酷な環境で生きる人々の直面する社会課題を扱うアート活動はいまだ少ない。
 ソーシャリー・エンゲイジド・アート展は、そうした国際・国内の潮流を並列させ、日本でのアートと社会の関わり方を再考する意図があった。その真意をくみ取らず、私たちの継続的な活動も理解せず、一方的な批判が活字という形で発表されたことは、大変残念なことである。

ソーシャリー・エンゲイジド・アート展 実行委員会一同

参考リンク:SEA展来場者のアンケート結果 http://www.art-society.com/sea

| |

SEA展来場者アンケート調査結果

アンケート調査は、2017年2月18日から3月8日の14日間の会期中に実施。展覧会会場出入り口でアンケート用紙への記入を呼びかけたところ、来場者全体1536人に対し461件の回答が寄せられました。その調査結果から、「とてもよかった」50.8%、「よかった」41.4%を加えると92%を超える高い評価をいただきました。また、今後もこのようなSEAを紹介する企画展を希望するか?という問いかけには、96%の来場者が「希望する」との回答があり、SEAへの関心の高さや、関連情報へのニーズの大きさを実感しました。アンケート実施に際しましては、多くの方々からの貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。
以下、アンケート結果と自由コメントから一部抜粋したものを掲載いたします。

展覧会全体への感想について

「とても興味深かった」
「今まで触れたことのない世界をみれて楽しかった」
「世界でおこなわれていることの視点の違いが興味深い」
「アートが社会でできることをあらためて考えさせられた」
「アートの新しい可能性を感じた」
「SEAのスケールの大きさを感じて感動した」
「メッセージ性がありもっとこういう展覧会があってほしい」
「価値観、意識、問題意識を揺さぶられた」
「近年で最もエキサイティングな展覧会」
「展示だけではわからない部分もあった」
「新しい可能性を感じたが、理解がむずかしものもあった」
「作品のギャップ、多様性、強度のばらつきを感じた」など

日本人の作品について

「(問題の文脈を)共有しているので気になった」
「日本のプロジェクトをもっと紹介してほしい」
「日本の若手アーティストの社会との関わりが希薄?切羽詰まってない?」
「日本の独特のSEAにフォーカスした展示も見たい」
「地域アートをどう批評的に再考するのか?」
「SEAへの批評性、展覧会で紹介する意義に触れてほしい」など

展示について

「常駐するアーティストとのコミュニケーションがあり、よかった」
「プロジェクト系の展示がよかった、勉強になった」
「見応えがある展示、バランスがよかった」
「映像が多かった」
「参加型の年表がよかった」
「同時にトークイベントが多くあってよかった」
「映像の時間の掲示がほしかった」
「イスがもっとほしかった」
「ギャラリーでの解説があればよかった」(ガイドは希望に応じて提供していた)など。

今後への期待

「SEAについての展覧会を継続的に開催してほしい」
「書籍、記録集をまとめてほしい」
「SEA位置づけ、定義、コンセプトをより説明してほしい」
「参加型年表の発行に期待」
「日本の現状をより大規模に紹介する展覧会を希望」など

アンケート結果

Q1

Q2

Q3                                                                                               

アンケート回答者の属性

F1

F2

F3

F4

| |

Socially Engaged Art 展 終了のお知らせ

『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展:社会を動かすアートの新潮流』は終了いたしました。会期中は多くのみなさまにご来場いただきまして誠にありがとうございました。
みなさまにお答えいただいたアンケートは現在集計中です。集計終了後、結果をWEBにて公開いたします。また展示のSEA年表は追記いただいたみなさまの声を反映し、更に充実した年表へと完成させたいと思っておりますのでご期待ください。

Photo by Haruhiko Muda

Photo by Haruhiko Muda

| |

『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展:社会を動かすアートの新潮流』を開催します!!

sociallyengagedart

会期:2017年2月18日(土)〜3月5日(日)
開館時間:11:00〜20:00 (最終入場19:00)
休館日:なし
会場:アーツ千代田3331
観覧料:一般・大学院生1000円/大学生・中高生500円(要学生証)/小学生以下無料

​http://sea2017.seaexhibition.site/

近年、アートの新しい潮流として注目されている「ソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)」は、現実社会に積極的に関わり、人びととの対話や協働のプロセスを通じて、何らかの社会変革(ソーシャル・チェンジ)をもたらそうとするアーティストの活動の総称です。本展では、とくに3・11以降顕著となった、社会への関わりを強く意識した日本人アーティストの活動に注目し、アイ・ウェイウェイ、ペドロ・レイエス、パーク・フィクションなど海外の代表的な作家やプロジェクトとともに紹介。東京を舞台に5つのプロジェクトも実施します。日本で初めての本格的なSEAの展覧会としてご期待ください。

アーティスト[プロジェクト・イン・Tokyo]

ペドロ・レイエス《銃をシャベルに》
2008年に始まった本プロジェクトは、発砲事件の絶えないメキシコの町で銃を回収し、鋳物工場でシャベルに加工して木を植え、展示する。本展では、港区笄小学校の4年生が1/2成人式で校庭に木を植える。

ママリアン・ダイビング・リフレックス/ ダレン・オドネル《子どもたちによるヘアカット》
子どもたちがプロの美容師から講習を受け、美容室で大人の客に無料のヘアカットを行う。大人と子どもの力関係を逆転させ、子どもの能力を見直すきっかけを提供する。東京では、足立区の「東京未来大学こどもみらい園、みらいフリースクール」で学ぶ子どもたちを中心に、東京ビューティーアート専門学校で研修を受けた子どもたちが、ヘアカットに挑戦。 ただ今、ヘアカットを希望するお客様の予約とヘアカットに挑戦する子どもたちも若干名募集しています!

西尾美也《Self Select: Migrants in Tokyo》
東京で暮らす海外からの移住者が、見ず知らずの通行人と衣服を交換する様子を映像に収めた後、展覧会場で自分の「服」を製作する。〈移住者〉と〈わたしたち〉の境界、ひいては〈移民〉について問いを投げかける。森美術館で開催中のラーニングプログラム「私たちは学んでいる:美術館と実験的なアート・ラーニングのこれから」に出演します。2月16日(木)18:30-20:00 詳細と申込みはこちらから。

明日少女隊《Believe -私は知ってる-》
2017年1月から国会で審議される刑法(性犯罪)の改正に向けたプロジェクト。紙製マスクに一般の人々から性暴力反対のメッセージを集め、そのマスクを装着して国会前などでパフォーマンスを行う。2月26日(日)13:00~17:00 、アーツ千代田3331 B105室にて「ビリーブ・トーク&ウォーク」を開催します!出演:明日少女隊、ちゃぶ台返し女子アクション、怒れる女子会

ミリメーター《URBANING UNIV.》
都市を「私の場所」にする実践者の養成を目指した1泊2日のラーニング・プログラム。議論や体験カリキュラムを通して誰もが参加できる小さな都市計画の方法を探り、そこから〈都市空間〉と〈私〉の関わりを考える。詳しくは、URBANING_Uウェブサイトをご覧ください。

アーティスト[会場にて展示]

アイ・ウェイウェイ
スザンヌ・レイシー 
フィフス・シーズン
パーク・フィクション/マルギット・ツェンキ/クリストフ・シェーファー 
プロジェクト・ロウ・ハウス
高川和也 
丹羽良徳 
藤元明 
山田健二

フライヤー(PDF)のダウンロード

プレスリリース(PDF)のダウンロード

本展レクチャー・シリーズ[参加アーティストによる連続トーク]

2月18日(土)14:00〜16:00
ペドロ・レイエス「アートと武装解除:《銃をシャベルに》の背景」

会場   アーツ千代田3331 (1階 ギャラリーB)
定員   20名(先着順 事前申し込み不要) ※通訳付き
参加費  無料(メインギャラリーの展覧会を鑑賞される方は、入場券が必要です)

フライヤー(PDF)のダウンロード



2月19日(日)14:00〜16:00
パーク・フィクション+藤元明+笠置秀紀(ミリメーター)「都市=わたしたちの場所」

会場   アーツ千代田3331 (1階 ギャラリーB / 1F, Gallery B)
定員   50名(先着順 事前申し込み不要) ※通訳付き
参加費  500円(メインギャラリーの展覧会を鑑賞される方は、入場券が必要です)

フライヤー(PDF)のダウンロード



2月24日(金)19:00〜21:00
ダレン・オドネル(ママリアン・ダイビング・リフレックス)「社会の鍼治療」

会場   アーツ千代田3331 (1階 コミュニティスペース)
定員   50名(先着順 事前申し込み不要) ※通訳付き
参加費  500円(メインギャラリーの展覧会を鑑賞される方は、入場券が必要です)

フライヤー(PDF)のダウンロード



3月2 日 (木)19:00〜21:30
フィフス・シーズン「​​オランダの精神施設内のAIR:精神と創造性への挑戦」

登壇者:エスターフォセン (フィス・シーズン ディレクター/キュレーター)+ウィルコ・タネブライヤー(精神科医/アムステルダム​​市メンタルヘス部局​​医療長)+岡田 聡(精神科医/​​アートコレクタ)+アーカス・プロジェクト


会場:アーツ千代田3331 ※開催時間に変更の可能性があります。

 

関連イベント

2月13日(月)10:00〜18:00
森美術館国際シンポジウム 「現代美術館は、新しい『学び』の場となり得るか? エデュケーションからラーニングへ」
会場:アカデミーヒルズ(六本木ヒルズ森タワー49階) ※2月14日より森美術館と各機関が連携し、アートと社会について考える「ラーニングウィーク」を開催(詳細は森美術館のwebサイト参照)



2月20日(月)19:00~21:00
ローカルな人々の知恵 「下からの」都市計画(仮題) マルギット・ツェンキ&クリストフ・シェーファー(パーク・フィクション)+佐藤慎也
会場:東京ドイツ文化センター 1階ホール


2月22日(水)19:00〜21:00
「ヒストリオグラファーとしてのアーティスト? : 記憶、忘却、物語」
モデレーター:崔 敬華 登壇アーティスト:藤井 光、山田 健二、山本 浩貴、横谷奈歩 会場:アーツ千代田3331 メインギャラリー 主催:nap gallery


2月26日(日)13:00~17:00
「ビリーブ・トーク&ウォーク」明日少女隊、ちゃぶ台返し女子アクション、怒れる女子会
会場:アーツ千代田3331 B105室


2月26日(日)17:30~19:00 (先着20名、要予約)
ギャラリートーク&セッション「アイ・ウェイウェイの新作《ライフジャケットの輪》とその背景」
講師:片岡真実(森美術館チーフキュレイター) インタビュア:村尾信尚(ニュースZEROメインキャスター) 会場:アーツ千代田3331

フライヤー(PDF)のダウンロード

参加アーティスト プロフィール[展示]

アイ・ウェイウェイ Ai Weiwei
1957年、北京生まれ。父アイ・チンの下放により、生後すぐに一家で新疆ウイグル自治区に移住し16年を過ごす。1978年に渡米し、西洋の近現代美術と出会う。1993年に帰国。「ドクメンタ」展(2007年)、2008年開催の北京五輪メインスタジアム《鳥の巣》設計。同年の四川大地震で亡くなった何千人もの子どもたちの調査に着手し、人権運動を本格化させると、政府による直接的な介入が日常化する。森美術館での個展(2009年)は46万人を動員し、その後国際巡回するが、会期中の2011年4月に拘束され、81日間の拘留。現在はベルリンを拠点に活動。2016年、トルコからギリシアのレスポス島に流れ着いた難民たちが使ったライフジャケット14,000枚をベルリンの劇場の柱に巻き付けた作品で、難民問題に揺れるドイツや欧州、そして世界に問題提起をした。

スザンヌ・レイシー Suzanne Lacy
1945 年、カリフォルニア州生まれ。1970 年代からアーティスト、アクティビスト、教育者、著述家として、実践と理論の両面で活動し、現在はLA のOtis College of Art and Design の大学院「Public Practice」コースで教鞭をとっている。レイプ、バイオレンス、高齢化問題、青少年問題など取り組むテーマは社会的だが、その参加型のアートワークは、メディアでの報道を勘案し、視覚的にも印象的な演出が特徴である。代表的プロジェクトには、LA の地図にレイプ発生地をスタンプする《5 月の3 週間》(1977 年)、高齢女性による対話パフォーマンス《クリスタル・キルト》(1987 年)、高校生とのコラボレシーション《ルーフ・イズ・オン・ファイア》(1994 年)などがある。

フィフス・シーズン Fifth Season
オランダ、デン・ドルダー(Den Dolder)にある精神科医療施設アルトレヒト(Altrecht)の敷地内にあるアーティスト・イン・レジデンス。精神医療と社会の間のギャップを埋めることを目的とし、1998年スザンヌ・オクセナーにより設立された。それ以来、精神病患者に対する偏見や差別などに関する問題を提起し、一人の人間として患者たちの話を社会に伝え続けている。春・夏・秋・冬の1シーズン(3ヵ月)、アーティストは広大な施設敷地内に建つスタジオ・ハウスで生活し、自身の観点から精神医学にアプローチする。それに加え、施設の患者やスタッフと日常的に接触しながら共に作品制作する機会が提供される。ここで制作された作品はオランダ国内外のギャラリーや美術館はもとより、精神保健機関などにおいて定期的に展示され、その成果は出版物としてまとめられる。これまでに、フィフス・シーズンには100人以上の著名、中堅、若手アーティストが滞在し、 2015年にはオランダのヘルスケアにおける最優秀芸術プロジェクトに授与される「エリザベス・ヴァン・シュトリンゲン賞」を受賞した。

パーク・フィクション/マージット・センキ/クリストフ・シェーファー Park Fiction / Margit Czenki / Christoph Schäfer
1995年、ハンブルグ(ドイツ)の貧困地区ザンクト・パウリの川沿いの土地に高層住宅とオフィスビルを誘致しようとする市の開発計画に反対してコミュニティ・プロジェクトを開始。地域住民の組合とアーティスト(クリストフ・シェーファー)、映像作家(マージット・チェンキ)が主導し、単なる抗議運動をするのではなく、開発予定地を自分たちの公共空間として、住民とともに、ゲーム、ピクニックやフェスティバル、展示、集会などに利用し続けた。また、ホットライン、アンケート、地図、インスタントカメラなどを備えた可動式の“プランニング・コンテナ”をつくり、近隣を回って、住民から要望を集め、実際の公園計画を作成。さらに、「ドクメンタ11」(2002年)をはじめ、多くのアート・イベントや音楽祭に、A.ロドチェンコの「Worker’s Club「を参照したドキュメンテーション/インスタレーションを出展。こうして、パーク・フィクションの活動は広く知られることとなり、その結果、2005年、市は計画を断念し、公園が実現した。その後も市民と分野横断的な専門家による開発事務所(PlanBude)を運営している。

プロジェクト・ロウ・ハウス Project Row Houses
プロジェクト・ロウ・ハウスは、アーティスト/アクティビストのリック・ロウを中心に、ジェイムス・ベティソン(1955-1997)、バート・ロング(1940-2013)、ジェシー・ロット、フロイド・ニューサム、バート・サンプルズ、ジョージ・スミスによって、テキサス州ヒューストンの「第3区」で1993年に開始。アートを触媒としてコミュニティの再生を目指すプロジェクトであり、それを運営するNPOの名称でもある。リック・ロウは1961年、アラバマ州生まれ。ヒューストンのテキサス・サザン大学に学び、社会問題をテーマとした絵画や彫刻作品を制作。1990年代初めから、アフリカン・アメリカンの居住区として長い歴史を持つ第3区の生活や文化を描き続けた画家ジョン・ビガーズやドイツのアーティスト、ヨーゼフ・ボイスの「社会彫刻」の考え方に影響を受け、コミュニティの社会的、経済的、文化的ニーズに直接応える活動に方向転換。打ち棄てられていた22戸の住宅を仲間とともに買い取り、改修して、アートと社会サービスを複合したプロジェクトに展開していった。

高川和也 Kazuya Takagawa
1986年、熊本県生まれ。 東京芸術大学修了。近年は主にインタビューや詩作、実験心理学を参照したワークショップ等を行う。 主な展覧会に「ASK THE SELF」(Tokyo Wonder site Hongo、東京、2016)、「screen」(HIGURE17-15cas、 東京、2014)、「Reflection of an outsider on outsider」(Seoul Art Space GEUMCHEON、ソウル、2011)など。

丹羽良徳 Yoshinori Niwa
1982年、愛知県生まれ。多摩美術大学卒業。ウィーン在住。タイトルに示される行為や企てを路上などの公共空間で試み、現実とのギャップや交渉の失敗などを含め社会や歴史へ介入しながら、その出来事の一部始終をビデオ記録として展示している。参加した主な展覧会に「瀬戸内国際芸術祭2016」(香川県直島、2016年)、「愛すべき世界」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、2015年)、「歴史上歴史的に歴史的な共産主義の歴史」 (Edel Assanti、2015年)、「あいちトリエンナーレ2013」、「六本木クロッシング」(森美術館、2013年)ほか。

藤元明 Akira Fujimoto
1975年、東京生まれ。東京藝術大学卒業。1999年コミュニケーションリサーチセンターFABRICA(イタリア)に在籍後、東京藝術大学大学院修了。社会、環境などで起こる人の制御出来ない現象をモチーフに、絵画・オブジェクト・映像・インスタレーションなど様々な手法で展示やプロジェクトを展開。都市の隙間を活用するアートプロジェクト《ソノ アイダ》を主催。主なプロジェクトに《2021》《NEW RECYCLE®》。展示「HEYDAY NOW」(COURTYARD HIROO・2015年)、「Negentoropy」(HAGISO、2014年)、「この都市で目が覚めて」(HIGURE 17-15 cas、2016年)など。

山田健二 Kenji Yamada
2008年、東京芸術大学卒業。東京、ロンドンを拠点に活動。固有の文化圏に遺る民俗知や遺跡、戦争遺産を含む近代遺産などを国際社会の中で流用・誤用することで生まれる葛藤や矛盾を共有するための社会実践や表現活動を行なう。3.11以降、日本やヨーロッパを中心に各地を環境難民のように移動しながら継続する彼の活動は、より流動的な社会的立場の人間が国際社会にどう働きかけられるかという実践を含みながら、その臨界と限界に無数の段階を拡張し、新たな思考のグレースケールを浮かび上がらせる。主なプロジェクトに《別府地熱学消化器美術館》(2011年)など。

若木くるみ Kurumi Wakaki
1985年、北海道生まれ。京都市立芸術大学卒業。自らの身体を作品の素材に用いた力づくの表現で、第12回岡本太郎現代芸術賞(2009年)、六甲ミーツアート大賞(2013)受賞。坂本善三美術館での個展「若木くるみの制作道場」(熊本、2013年、2014年)では、30日間で30作品、新作を発表した。近年の主な展示に「また起きてから書きます」(アキバタマビ21、2016 年)、「ユニフォーム」(Ponto15 / Finch Arts Gallery、2016 年)、「六本木アートナイト2016」など。

参加アーティスト プロフィール[プロジェクト]

ペドロ・レイエス Pedro Reyes
1972年、メキシコ・シティ生まれ。メキシコを拠点に、彫刻、絵画、音楽、パフォーマンスと多様な領域で活動する。2008年から継続するプロジェクト《ピストルをシャベルに》では、回収した銃をシャベルにして木を植え、《武装解除》(2012年)では、銃を自動演奏の楽器へと変身させた。「自分にとってアートとは本質的にネガティブなものをポジティブなものに変える方法を見つけることであり、社会や人々の意識を変えるような作品を作りたい」と語っている。第1回《人々の国際連合》(ニューヨーク、2013年)では、国籍や言語の異なる人々が集い、世界の諸問題について、社会学、心理学、演劇、アートなどの手法を駆使してユーモア溢れる創造的な解決を試みた。第3回は金沢で開催。


ママリアン・ダイビング・リフレックス/ダレン・オドネル 
 Mammalian Diving Reflex/Darren O’Donnell
ママリアン・ダイビング・リフレックスは、1993年、ダレン・オドネルにより設立されたアート&リサーチ集団。ダレン・オドネルはカナダ生まれ。小説家、エッセイスト、劇作家、パフォーマー。公共の場でアーティスト以外の、多種多様な背景を持つ人たちとコラボレーションし非現実なスペースを作り出すことで社会的な文脈に介入する機会を作り出す。「近い将来、すべての子どもにハサミが与えられ、自分の未来を自由に切り取り創造できる社会にしたい。すべての子どもに社会での権利が保障され、未来に投票でき、参政権が与えられ、バスを走らせられる社会にしたい。」 パフォーマンス・子供たちによるヘアーカットにて。ダレン オドネル

西尾美也 Yoshinari Nishio
1982年、奈良県生まれ。同県在住。2011年、東京藝術大学大学院修了。文化庁芸術家在外研修員(ケニア共和国ナイロビ)などを経て、現在、奈良県立大学地域創造学部専任講師。装いの行為とコミュニケーションの関係性に着目し、市民や学生との協働によるプロジェクトを国内外で展開。アフリカと日本をつなぐアートプロジェクトの企画・運営のほか、ファッションブランド「FORM ON WORDS」も手がける。主な個展に「間を縫う」(3331ギャラリー、2011年)など。近年の主なグループ展に「拡張するファッション」(水戸芸術館、2014年)、「あいちトリエンナーレ2016」、「さいたまトリエンナーレ2016」など。

明日少女隊 Tomorrow Girls Troop
2015年、様々な性別の第4世代若手フェミニストによる社会派アートグループとして結成。「男性、女性、いろんな性、 みんなが平等でHappyな社会を」をモットーに 展覧会やパフォーマンス、レクチャー、SNSでのコミュニティー作りなどを社会運動の一環と捉え、幅広く活動する。主なグループ展に「Feminist Fan in Japan and Friends」(アートスペース遊工房、2016年)、「Normal Family」(Last Projects、ロサンゼルス、2015年)、 パフォーマンスでは《Girls Power Parade 》(表参道、2016年)、レクチャーでは「保育園落ちた!選挙攻略法2016」(上智大学、2016年)など。

ミリメーター mi-ri meter
2000年、宮口明子と笠置秀紀によって活動開始。建築、フィールドワーク、プロジェクトなど、ミクロな視点と横断的な戦術で都市空間や公共空間に焦点を当てた活動を続ける。日常を丹念に観察し、空間と社会の様々な規範を解きほぐしながら、一人ひとりが都市に関われる「視点」や「空間」を提示している。主な活動に《Tents 24》(セントラルイースト東京 、2005年)、《アーツ前橋 交流スペース 》(前橋市、2013年)、《仙台文学館を再編集する》(SSDせんだいスクールオブデザイン、2014年) 、《川と路》(鳥取藝術祭、2015年)など。

| |

【SEA展レクチャー・シリーズ】
「精神と創造性の挑戦:オランダ フィフス・シーズンの取り組み」

SEAtalk0302 FS_image

フィフス・シーズンは、精神科医療施設「アルトレヒト」の広大な敷地内に、アーティストのスタジオ・ハウスを持つアーティスト・イン・レジデンス(AIR)プログラム。精神医療と社会の間のギャップを埋めることを目的に1998年設立され、これまでに100人以上が滞在した。特別な環境の中で、アーティストは1シーズン(3か月)滞在し、患者やスタッフとも交流し、作品を制作する。2015年、オランダ医療界の権威ある「エリザベス・ヴァン・シュトリンゲン賞」を受賞。トークセッションでは、フィフス・シーズンのディレクターでありキュレーションの責任者であるフォセン氏が、プログラムの特色とその目的を語る。また、姉妹プロジェクトとして2014年、ニューヨークの精神病院で開始した「ビューティフル・ディストレス」の設立者タウネブライヤー氏により、このAIRの展望、精神疾患と芸術の関係性について語って頂く。日本からは長年精神科医として、精神疾患と向き合いつつ、アートコレクターとして芸術と密接な関わりを築いてこられた岡田氏と、日本のAIRプログラムを代表する茨城県守谷市のARCUS Projectの石井氏に登壇頂く。「精神」と「アート」を軸として、オランダ対日本という視点でなく、4者の経験とそれぞれの視点から本テーマを深めていく。

「 精神と創造性の挑戦:オランダ フィフス・シーズンの取り組み」
登壇者:エスター・フォセン / ウイルコ・タウネブライヤー / 岡田聡 / 石井瑞穂
“Activities of the Fifth Season: Artist in Residence Program in Psychiatric Institution”
Speakers: Esther Vossen / Wilco Tuinebreijer / Satoshi Okada / Mizuho Ishii
3月2日(木)19:00〜21:30
会場   アーツ千代田3331 (1階 コミュ二ティスペース)
定員   50名(先着順 事前申し込み不要) ※通訳付き|通訳:池田哲
参加費  500円(メインギャラリーの展覧会を鑑賞される方は、入場券が必要です)

|出演者紹介|
エスター・フォセン| Esther Vossen
フィフス・シーズン ディレクター/キュレーター。オランダ・コーポレートアート協会(VBCN)の理事およびモンドリアン財団の委員を務める。ジャーナリズムを学び、オランダ国立放送(VPRO)の番組制作者として働く。その後、アート・アカデミーとアムステルダム大学で美術史を学ぶ。 1998年以来、アペル・アーツ・センター、オランダ国立博物館の精神医学部門、Dolhuys博物館などの美術機関においてプロジェクトマネージャーおよびキュレーターとして働く。

ウィルコ・タウネブライヤー|Wilco Tuinebreijer
ビューティフル・ディストレス設立者&理事長/精神科医。アムステルダム市公共健康局メンタルヘルス部にて医療長として従事する。

岡田 聡| Satoshi Okada
Villa Magical2014代表/精神科医。1958 年富山県生まれ。精神科医を本業としながら、30代の頃より日本の若手作家を中心に現代美術作品のコレクションをはじめる。展覧会へのコレクションの出品のほか、自ら展覧会の企画などもおこなう。またアートバー(TRAUMARIS)やギャラリー(MAGIC ROOM?、magical、ARTROOM)の運営、Ustreamでのアート番組の配信や自ら参加するアートパフォーマンス集団「どくろ興業」での活動を経て、近年は湘南Villa Magical2014を拠点に活動。

石井瑞穂|Mizuho Ishii
アーカスプロジェクト コーディネーター。千葉県生まれ。2002年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程デザイン専攻修了。03-04年ポーラ美術振興財団在外研修員として東南アジア各国のオルタナティヴスペースを調査。07-08年、アーティスト主導のAIRを運営。アーカスプロジェクトでは在学中よりボランティアとして携わり、12年よりコーディネーターとしてレジデンスプログラムや地域プログラムの企画運営を務める。現在は主にアーカイブ事業を担当。

フライヤー(PDF)のダウンロード


『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展:社会を動かすアートの新潮流』

| |

【SEA展レクチャー・シリーズ】
「アイ・ウェイウェイの新作《ライフジャケットの輪》とその背景」

SEAtalk0226_AW_01

現在ベルリンを拠点に活動するアイ・ウェイウェイは、昨年、トルコからギリシアのレスボス島に流れ着いた難民たちが脱ぎ捨てたライフジャケット14,000 枚をベルリンの劇場の柱に巻きつけた作品で、難民問題に揺れる国際世界へ強いメッセージを送った。本展のために制作された同シリーズの新作について、森美術館での大規模な個展(2009 年)を企画した同館チーフキュレイターの片岡真美さんが解説。また、アイ・ウェイウェイに二度にわたりインタビューを行ってきたニュースキャスターの村尾信尚さんと、社会を動かそうとするアーティストたちの活動とその背景に迫る。

ギャラリートーク&セッション 「アイ・ウェイウェイの新作《ライフジャケットの輪》とその背景」
講師:片岡真実(森美術館チーフキュレイター)/インタビュア:村尾信尚(NEWS ZERO メーンキャスター、関西学院大学教授)
Gallery Talk and Session Ai Weiwei’s New Work and His Commitment to Documenting the Refugees
Lecturer: Mami Kataoka / Interviewer: Nobutaka Murao
2月26日(日)17:30〜19:00
会場   アーツ千代田3331 (ギャラリートーク後、1階コミュニティスペースで開催)
定員   50名(先着順 事前申し込み不要)
参加費  500円(メインギャラリーの展覧会を鑑賞される方は、入場券が必要です)

|出演者紹介|
片岡真実 Mami Kataoka
東京オペラシティアートギャラリーを経て、2003 年より森美術館に勤務。「六本木クロッシング」(2004、2013)、「小沢剛展」(2004)、「笑い展」(2006)、「ネイチャー・センス展」(2010)、「会田誠展」(2012) などの企画を担当。2009 年に企画したアイ・ウェイウェイの大規模な個展「何に因って」は46 万人を動員、その後国際巡回した。現在、CIMAM(国際美術館会議) のボードメンバー、グッゲンハイム美術館アジア・アート・カウンシルのメンバー。2018 年に開催される第21 回シドニー・ビエンナーレのアーティスティックディレクターにアジア人として初めて就任。

村尾信尚 Nobutaka Murao
大蔵省時代に、国際人道支援を行うNGOやNPOを支援するためのジャパン・プラットフォームの設立に携わり、NGO、経済界、政府が協働するシステムを確立。当時から、政府の中枢にあって、国際社会への貢献や、社会に貢献する企業活動「ソーシャル・アントレプレナーシップ」の重要性を説いてきた。2006年よりNEWS ZERO のメーンキャスター。アートと社会貢献に高い関心をもち、アイ・ウェイウェイには東京と北京で二度インタビューを行ってきた。本展におけるアイ・ウェイウェイの新作の実現にも協力。

フライヤー(PDF)のダウンロード


『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展:社会を動かすアートの新潮流』

| |

【SEA展レクチャー・シリーズ】
MDRの参加型パフォーマンスは「社会の鍼治療」

SEAtalk0224_DO_01

ママリアン・ダイビング・リフレックス(MDR)は、1965年カナダ、エドモントン生まれの作家、脚本家、パフォーマンス・アーティスト、ダレン・オドネルが1993年に設立したアート&リサーチ集団である。2003年まではオドネルの舞台パフォーマンスが中心だったが、伝統的なヨーロッパ演劇の後進性や硬直性に限界を感じた彼は、「人々はお互いにどのように関わりあえるか」をテーマにアプローチの幅を広げ、学校や老人ホーム、地域組織、国際アート・フェスティバルなどとのコラボレーションで、“社会の鍼治療(Social Acupuncture)”と称する、遊び心にあふれ、挑発的な参加型プロジェクトを行うようになった。2006年に著書『Social Acupuncture』を出版し、MDRの創造的方法論を確立した。
本レクチャーは、代表的プロジェクト「子どもたちによるヘアカット」をはじめさまざまな事例から、そのコンセプトを説き明かす。

MDRの参加型パフォーマンスは「社会の鍼治療」
Participatory performance by MDR is called “Social Acupuncture”

登壇者:ダレン・オドネル(ママリアン・ダイビング・リフレックス[MDR]芸術ディレクター)
Speaker: Darren O’Donnell (Artistic Director of Mammalian Diving Reflex)

2月24日(金)19:00〜21:00
会場   アーツ千代田3331 (1階 コミュ二ティスペース)
定員   50名(先着順 事前申し込み不要) ※通訳付き|通訳:池田哲
参加費  500円(メインギャラリーの展覧会を鑑賞される方は、入場券が必要です)

子どもたちによるヘアカット Haircuts by Children
10 ~ 12 歳の子どもたちが、プロの美容師から講習を受けた後、本物の美容室を借り、大人の客に無料のヘアカット・サービスを行う。そのねらいは、「子どもたちには美的・創造的な決定のできる個人としての責任と自信を持たせ、大人たちには、従来の大人と子どもの力関係が逆転した非日常的な体験により、子どもの能力を見直すきっかけを提供する」。2006年からMDRが活動拠点を置くトロントをはじめ、世界35都市で、主に地域の芸術祭のプログラムとして実施されてきた。日本での初開催となる今回は、足立区のオルタナティブ・スクール「こどもみらい園」の児童を中心に、2 月 26 日(日)にヘアカットに挑戦する。

フライヤー(PDF)のダウンロード


子どもたちによるヘアカット −Haircuts by Children−

『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展:社会を動かすアートの新潮流』

| |

S.O.S.レポート「オルタナティブ・スペースが還るとき」

ツアー当日、出発場所となっていたアートラボはしもとではS.O.S.のメンバーによる関連企画「SOMETHINKS Planning by ARTISTS」展が開催されていた。

ツアー当日、出発場所となっていたアートラボはしもとではS.O.S.のメンバーによる関連企画「SOMETHINKS」展が開催されていた。


「オルタナティブ・スペース」という言葉をあちこちで聞くようになって久しい。一見すると定義がし難いように見えるが、例えば千代田アーツ3331のように、ひとつの場を展示スペースとしてはもちろんのこと、講演会やワークショップ、そしてオフィスや地域住民の集会所など、表現活動に派生した様々なアクティビティを行う場と考えて良さそうだ。
 今日、このようなオルタナティブ―すなわち多様な芸術表現を受け入れるための場は、アーティストのみならず市民をも巻き込んで、「アート」の既成概念を拡張する土壌となりつつある。見る/見られる者、表現する者/それを支える者といったあらゆる境界を統合しつつ、時には祭事的な色を湛えながら、オルタナティブ・スペースは開かれた場として芸術と一体化しているのである。
 言うまでもないことだが、表現の場をめぐる格闘は20世紀の芸術を語るうえで重要な位置を占めてきた。戦後、物理的・制度的制限のあるホワイト・キューブを踏み越えたアーティストたちが新たな表現の場を模索し、そのムーヴメント自体が社会やコミュニティを生成する役割を担ってきた。例えば、2000年代初頭から日本各地で開催されるようになったアートフェスティバルという形式は、その系譜を受け継ぐムーヴメントと言ってもいいだろう。とある場を舞台に、作品を介して人と人が出会い、関係性を構築する。作品は一連のプロジェクトの仲介役としての役割を果たし、作品鑑賞を含めた「その場での体験」そのものに価値が見いだされる。ニュートラルかつ“鑑賞体験の純粋性”1を志向したホワイト・キューブから、オルタナティブあるいはサイトスペシフィックな場、そしてそれをもとにしたヒト・モノ・コト間の関係性の構築へ————。このような変遷を踏まえて、以下改めてアートと場の関係性について考えてみたい。というのも、先日伺った相模原のプロジェクトが、この文脈において新たな表現の場の「見方」を示唆しているように思われるからである。
 SUPER OPEN STUDIO(通称S.O.S.)は、神奈川県北部の相模原で活動するアーティストのアトリエを一般に公開するプロジェクトとして、2013年にスタートした。その制作から展示に至るまでの包括的な活動を作り手自らが組織するムーヴメントとして注目を集めている。アーティストの制作現場における展示というと、例えばヤン・フートが1986年に行った「シャンブル・ダミ(Chambres d’Amis:友人の部屋)展」が挙げられるだろう。ベルギーのゲント市の家々を舞台として、フートと面識のある国際的なアーティスト51人がそれぞれの家で制作・展示を行った画期的なキューレーションである。期せずしてこの展覧会は地元アーティスト主催の展覧会を誘発する効果を生み、オルタナティブ・スペースの代表例として知られることとなった。言わばキュレーターがアーティストの自主展覧会の起爆剤としての役割を担ったわけである。
 一方、S.O.S.は相模原に拠点を持ったアーティストが、日頃制作の行われている“実際の”アトリエ(S.O.S.ではスタジオと呼んでいる)を舞台に、キュレーターではなく“彼ら自身の手によって”企画・運営が組織されているという点で、前者とは一線を画している。昨今はTAV GARELLY2やART TRACE GARELLY3など、若手アーティストがひとつの場を基盤として活動するオルタナティブ・スペースが増加しているが、S.O.S.もその一例と言えるだろう。どれも展示活動に派生したアクティビティを、資金調達・運営手法の確立等によって実現可能にしている先例である(左記の過程は、アーティストが自律し、その表現の独立性を保持するためには欠かせないことは言及するまでもない)。
 今回、秋季に開催された「スタジオビジット・ツアー」に参加し、計9か所のスタジオを巡った。インターネットで応募した参加者が貸し切りバスに乗って、1日をかけ各スタジオを巡るというプロジェクトだ。今年度S.O.S.に参加しているアトリエは23組、アーティスト数は述べ110人を越える。相模原市の事業として運営されていた2年間を経て、S.O.S.は2015年からアーティストによって組織された団体「Super Open Studio NETWORK」がセルフオーガナイズしている。ツアー参加者は、美術大学に通う大学生、キュレーター、美術愛好者等で、なかにはアメリカのアートフェアから来たという関係者もおり、実に幅広い。貸し切りバス車内の程よい緊張感は、コーディネーターの久野さん(作家であり、「studio kelcova」のメンバー)のお話を聞くうちに和気藹々とした雰囲気に変わり、ツアーは終始和やかなムードで進行した。

 相模原は政令指定都市として県内で第3位の人口を有し4、東京都南部との県境に位置するベッドタウンである。関東有数の米軍施設拠点・工場地帯として、また多摩美術大学、東京造形大学、女子美術大学、そして桜美林大学が群立する文教地区としての顔を持ち合わせるこのエリアは、3,40代がその人口の基盤を占める5。その一成員であるS.O.S.のアーティストは、先述した大学の卒業生が多く、それに派生したコミュニティを形成しているようだ。彼らは閉鎖された工場の建物などをスタジオとして再利用し、制作を継続している。衣食住を共にするところもあれば、制作のみ、作品の収蔵庫として使用する人もいるが、ビジネスライクな関係というよりは、たまに食事を共にする友人のような(もちろん家族のようなところもあった)、程よい距離感が構築されているように見えた。

セクシュアリティをテーマにした長尾郁明氏の作品(TANA Studio にて)。ポルノビデオの女性器のイメージをグリッドに還元している。

セクシュアリティをテーマにした長尾郁明氏の作品(TANA Studio にて)。ポルノビデオの女性器のイメージをグリッドに還元している。


 久しぶりに友人の家を訪ねるような気軽さでスタジオに案内されると、アーティストが茶菓子を用意してにこやかに出迎えてくれた。或いは、こちらに脇目も振らず制作に熱中するアーティストの横を、「目撃者」として通り過ぎる時もあった。総じて言えるのは、画廊や展覧会を見に行く時のような、「見る者」と「見られる者」という明快な境界線がないということである。或いは、非日常としてのキューブのなかで、「作家」や「作品」と対峙する時のような、どこか“特別な”演出も一切無い。彼らはただ「作品を作る人」として、そこで出迎えてくれる。メンバー同士では普段どんなことを話すのか、建物を改装した時のハプニングや、近所の人が差し入れを持ってきてくれたこと、買い出しが少し不便なこと、そしてその延長線上で制作に繋がる自分のエピソードや、作品に込めた思いが紡がれていく。驚くほど自然に、隣人としてのアーティストの本音を聞くことができるのだ。お互いが話し、耳を傾け合うことで、一人ひとりの作家と対等な距離感でコミュニケーションをとることができる。もちろん先述したように、関係者も来ているので、この機会を機に自分を売り込むこともできる。拠点は相模原としつつ、銀座などのギャラリーで発表をする者も当然いる。つまり、あくまで拠点を相模原に置くことのみが共有されているコミュニティなのである。S.O.S.の代表である山根一晃氏はステイトメントのなかで以下のように述べている。「様々なアーティストが異なる目的のもとに集い、同じような風景の下、同じような食堂でご飯を食べる。そして、この相模原という場所をハブとして、各々がめざすものの為にそれぞれが自らの意思と責任のもと動いていく」。6このように、スタジオという場を起点としたメンバー同士のゆるやかで独立した個人からなる連係が、また新たなアトリエ同士の連係を生み、それが地域住民との共同体へと円環状に波及しているのだ。
 当たり前のことのようでいて、とりわけ日本の社会では、このようなフラットな関係性のなかでアーティストと対峙することは難しかったのではないだろうか。昨今東京藝大の“特殊性”について取り上げた本が話題となったように、アーティストをどこか別世界の存在として、才能や独創性という言葉で区別してしまう傾向は、未だ確かに存在する。昨今のアートフェスティバルも、地域の持つ自然や建造物、温かな人間関係等とアートの共存を目標とする傾向にあるが、そこに展示される作品は“地域の魅力を引き出すことを目的としたアート”であることが多い。それらが良いか悪いかはさておき、あるテーマをもとに輸入されたキュレーション・プロジェクトであることには変わりない。その点、S.O.S.は、相模原という場を基盤として、まずアーティストがそこに拠点を置くことから始まっている。スタジオを構え、地域の人々と隣人として交流し、生活する延長線上に作品制作がある。アウトリーチの結果としてではなく、自然発生的なエンゲージメントの結果として、アートが緩やかに内在する共同体が形成されつつある。
「pimp studio」にて。自動車修理工場を改装したスタジオで、現在11人のメンバーが集う。

「pimp studio」にて。自動車修理工場を改装したスタジオで、現在11人のメンバーが集う。

 日本のアートプロジェクトは現在、2020年のオリンピックに向け発展の途にある。それは同時に、高齢化に伴う諸地域の過疎化、地方産業の衰退、あらゆる文化施設予算の縮小等、山積する問題の切り札としてのアートが推奨されていることを意味する。官民恊働や国際規模でのプロジェクトは、様々なアーティストを奮起させ上述した危機の打開策となる可能性を持つだろう。しかしその一方で、近現代で議論されてきた先導̶追従の垂直的な構図をなぞる危険を孕んでいることは、既に論じられている通りである。S.O.S.は、先述したステイトメントのなかで、彼ら自身の活動を「アートという場のインフラ整備」だと語っている。明確なオピニオンのもとに集った集団でもなければ、地域おこしのためのプロジェクトでもない。ただひたすらに、異なるアジェンダを持ったアーティストがひとつの場に共存し、静かに、しかし着実に相互関係を構築しているのだ。元来共同体にとって、土地は彼らの“包括的な基盤”7であり、根ざす場なしにその継承は困難であった。土地を拠点とした生産活動を営み、その上で個人としての活動をも並行させる共同体は、中長期的なアートの“インフラ整備”を遂行させる上で重要なムーヴメントとなり得るだろう。その意味において、今日における表現の「場」との関わり方は共同体の命脈を左右する重要なファクターである。大地が肥沃に還るその時こそが、時代の起点となるのではないだろうか。
(文:高橋ひかり)



1 ホワイト・キューブ 現代美術用語辞典ver.2.0 http://artscape.jp/artword/index.php/ホワイト・キューブ
2 専属キュレーターがそれぞれのキュレーションによる展覧会を行うギャラリーとして2014年に始動。展示スペースのほかに、ワークショップやイベント等を行うLAB SPACEを有する。http://tavgallery.com
3 NPO「ART TRACE」を母体とした、両国にスペースを持つアーティストラン・ギャラリー。武蔵野美術大学OBOGの主要メンバーを主軸に、期ごとに参加メンバーを公募、展覧会を主に講演会やワークショップなども行われる。同母体の関連事業としては林道郎著「絵画は二度死ぬ、あるいは死なない」シリーズを出版するART TRACE PRESSなどがある。http://www.gallery.arttrace.org
4 神奈川県の人口と世帯 神奈川県ホームページ…http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f10748/
5 平成27年1月1日現在。…http://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/toukei/20998/jinko/nenrei/index.html
6 『SOSBOOK 2016』, p4
7 大塚久雄著『共同体の基礎理論』岩波書店,2000年, p12

高橋 ひかり(Hikari Takahashi)
1995年生まれ。神奈川県出身。武蔵野美術大学芸術文化学科在籍。2014年より絵画制作活動を開始、アーティストランギャラリー・ART TRACE GALLERYにおける個展等7回の出展を経て現在 に至る。アートムーヴメントにおける共同体の自律性・持続性に興味を持ち研究をすすめる。

 

| |