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P+ARCHIVE

2010.08.18

第2回研究会記録

第2回研究会(8月4日)では、第一回レクチャーに先立ち受講生の方へ出されていた課題「川俣正のアートプロジェクトをアーカイブするためにはどのようなものを収集・保存すべきなのか」について、川俣氏のレクチャーを受けて、4人づつのグループで、「ワールド・カフェ」プロセスでディスカッションを深めました。

みなさんの議論はこのテーマにとどまらず、アーカイブにまつわる根本的な意見もいくつか出されました。そのようなレベルの違う意見もぜんぶまとめて箇条書きにしてありますので、少々わかりづらいかもしれませんが、一応ぜんぶ拾う形で記しております(発表順にテーブル1〜4としています、写真をクリックすると拡大した写真を見られます。)

テーブル1
・「アーカイブ」と「ドキュメント」との違い。「アーカイブ」は人の手から離れたもの、過去のもの。 一方、「ドキュメント」は過去だけでなく現在のものを含むものである。
・公になっているもの(記事、DMなど)は必ず収集すべき。
・鑑賞者サイドの反応(インタビュー、ツイッターなどWeb上の情報など)も収集すべき。
・写真はそのとき撮らなければ存在しない情報なので重要である。

テーブル2
・川俣氏は次のプロジェクトに活かすためにアーカイブしている。その資料がどこでどのように活かされ、次のプロジェクトが生まれるのかわからないため、基本的には「ありとあらゆるもの」を収集している。川俣氏の場合はとにかく「ありとあらゆるもの」を収集すべきである(それをどのように分類し、保存していくかは、また別問題)。
・音声の資料も重要である。

テーブル3
・素材についてはリストや入手ルートをできるだけ収集すべき。
・写真については、作品に限らず、それをとりまく全景、そして参加者などの人々の表情なども必要。
・メディア情報について、たとえばチラシ、DM、ポスターなどは、各地方の配布状況(部数)によって人の集まり方も違ってくる。そのような事情も考慮すべき。
・アートプロジェクトのアーカイブは「プロセス」に重点を置くべき。プロセスとは、プロジェクトのリサーチ段階に始まり、制作を経て、プロジェクトの終了までを含むもの。
・アーカイブズ学とアートアーカイブとのイメージのずれ。アーカイブズ学では「これが必要だからこれを集める」というのではなく、蓄積された資料から選んで残していくという方法である。アートプロジェクトのアーカイブはこれと違うのではないか。

テーブル4
・アーカイブの目的とは何か。川俣アーカイブの場合は、川俣氏自身が収集できないものこそ集める意味がある。参加者の感想、気持ちなど。
・また、あらゆるものを集めた中で、それをどのように見せていくかが重要。
・後世の人のためのアーカイブを考える。そのため資料の保存の仕方(形態)なども考えるべき。
・とはいえ、100〜200年後の人たちは現在の我々と価値観が違う。まずは我々が知りたいもの、残したいと思うものを目的とすべき。
・アーカイブは関係者(内部)が作るものと、外部の人が作るものとで違ってくる。
・プロセスのアーカイブから、プロジェクトの試行錯誤が見えてくると面白い。

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